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マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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マッスル・ウィッチ 7

「私も若い頃は魔術師していたからね……」
「公子の一件は御内密に」
婦人も彼女が派遣されたと言う事はただ事ではないと察していた。
「セジューク元老院も動くほどだし……万が一の時は私の屋敷に来なさい。マジックアイテムがあるから」
セジューク元老院とは言わば最高決定機関でありマリーの師匠もその一人だ。
「感謝します」
婦人はホッとした……公子の異常を察した彼女は密かに使いを出しセジューク元老院に依頼したのである。
「それと、息子の件は半分は本気。半分は貴方の弟子として欲しいのよ」
「まだ不肖の身、弟子を取るまでは至りませぬ」
「あら、公子にご学友は必要だわ。それに貴女とは色々お話せねばならぬ事もあるし、その時でも息子と娘を紹介するわ」
「ふむ、それならば承る」
そんな会話をしながらもマリーはこの素性も知らぬ婦人を心配してしまう。
「しかし、事と次第によっては貴女にも危険が」
「貴女の事は師匠からよく聞いてます……だからこそ承諾したのです」
「姉弟子……」
「ええ、パッとしなかったけどね」
婦人は苦笑する。確かにマリーの師であるオルスネス師には有名になった弟子も多いが、当然ながら普通の魔道士の方が多いのだ。



「杖を作りに行きたい」
パーティーから数日後、アイルはマリーに申し出た。魔道士を目指す者にとって杖を作りに行く事は一種の試練でもある……最もマリーはこの試練をあっさりクリアした。




しかもこの辺りでは最も危険なダンジョンの一つ“魔獣の深森”でだ。通常の魔道士なら相当なキャリアを積み、尚且つ護衛役も相当な腕利きを雇う必要がある。マリーはオルスネルの元で仕えている頃から異常な魔力量を誇り、通常なら触媒や誘導の役割を果たす杖が無ければ出来ない事も易々と出来る。故に即急に杖を必要とするが材料もそこら辺のダンジョン内にある樹木では耐えられない……オルスネルは懇意にしている傭兵騎士団が魔獣の深森でモンスター狩りをすると聞いて彼女を帯同させたのである。傭兵騎士団も子供っぽく見えるマリーを見て不安を感じた……が、それはダンジョン内に入るなりゴブリンをぶちのめし、スライムのコアを引き抜く、終いには棋士ですら手古摺るダークオークをシメ殺す……露払いには十分過ぎる活躍を見せた。これで治癒や肉体強化も一通り出来るから驚きだ。
だが、彼女は確かに魔導士ではあるのだが、その肝心な魔術は誰も見た事が無いのだ。
彼女が言う『魔術』と言うのは肉体を駆使し、物理的に敵に打撃を加えてるようにしか見えず、それは一般的には格闘技と呼ばれるものである。
ただ格闘技にしてはその威力たるや人間離れしており、魔術と言うか超人的なのは間違いない。

そしてマリーを知るディックも彼女から魔術的要素を感じた事が無かったのだが、熟練の傭兵隊長から見てもマリーのあの威力は非常識極まりないのだった。

もうあれは『魔術』でいいだろ・・・

それがマリーの非常識な格闘能力を知る者の共通認識だった。

だがそれを知らない公子アイルは、純粋にこの旅でマリーが見せる『魔術』に期待していた。
彼の想像する魔術は、杖から炎や雷を発し的を倒すと言うありがちなもので、それは普通の人からすると当たり前な想像だ。

マリーもアイルの呪いの状況が今一つ把握できないので迷ったが、魔道士としての才はあるのだ……普通の勉学に織り交ぜて魔術の基礎を教えているが筋が良い。
「分かりました、ですがこればかりは貴方のお父上であるライオス様の許可が……」
「許可なら出そう」
「お父上……」
ライオスは偶然にも会話を聞いており、息子の積極的な発言にニヤリとしたが傍に居たドワサンは慌てふためく。
「た、確かに魔道士にとって杖を作る事は大事ですが……」
「ダンジョンに関してはマリーやディックに任せよう、ドワサンも先輩としてアイルに教えてほしい」
画してアイルの初冒険計画が動いたのである。

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