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マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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マッスル・ウィッチ 4

彼の獣の本能が危険な匂いを嗅ぎつけると共に、一戦交えたい衝動も湧き起っていた。
こうして、マリーは正式に公子の家庭教師となった訳である。


その公子、アイルは戦々恐々としていた。
彼の家庭教師となる魔道士の噂は一人歩きしたものも多いが、それを話半分に聞いても彼を恐れさせるに十分だった。

オーガ鬼を殴り殺した等は序の口・・・
ドラゴンを絞め殺し、魔神を撲殺。
その拳は岩をも砕き、その蹴りは大地を引き裂く・・・
その容貌は鬼の様な大女だと言う。

誰に確かめても、噂は真実に近いと言うか・・・
どこまでが本当か分からない事実がわんさかと出てくる。
唯一彼女を知るディックは国内外でも屈指の実力を持つ騎士だが、彼女については多くを語らず『私はアレに勝てません』と言うのみであった。
彼がそう言う事を言う人間はアイルの知る限り、ライオスと彼女だけだった。
そんな噂のせいで正直逃げ出したいし、そんな魔女をよこす父を恨みたくもあった。

アイルは同年代の男子に比べると小柄で華奢。
その容姿はまるで美少女のようで、女装すれば確実に間違われると言うか、今でも『男装する美少女』のようですらある。
これは絶世の美女と呼ばれる母に瓜二つな容姿なのだが、それがヴァ―ランドの世継ぎとして問題である自覚はあった。

だが、そうは言っても彼は剣術馬術は苦手だし身体も強くない。
性格も大人しく、読書が趣味で花や詩を愛する少年だ。
これが他の国家であれば、貴公子として社交界で持てはやされるだろうが、ヴァ―ランドは違う。
生まれてくる場所を間違えたような少年なのだ。

「どうしましょう・・・野蛮な方だったら・・・」
「アイル様が余りにも不憫です・・・」

落ち着きがない主君を見ながらそう言うのは、彼の侍女長ユリアと護衛騎士のソニア。
2人の美女は少々アイルに甘いが忠実な部下だ。

勿論2人もマリーに関する噂は聞いている。
それだけに主君の不憫を嘆かずにはいられないのだ。

「ユグドラル師、参られました」
「は、入ってくれ!」

アイルの声は緊張で上ずっていた。

だが、入っていたマリーを見て、胸を撫で下ろした。
ちゃんとした人間だったのは元より、見た目も怖くない美少女だったからだった。

「1級魔道士マリー・ユグドラル、今日より公子殿下の家庭教師を務めさせて頂く」

凛とした力強い言葉だが、れっきとした女性の声に彼はホッとした。
噂はどうにも大げさだったらしいと、お付きのユリアもソニアもホッとしたのだ。

「ユグドラル師、宜しくお願いします」

アイルは安堵しながら頭を下げた。
こうしてマリーの家庭教師生活が始まったのだが、それは大方の予想を覆すものであった。


それから半月程・・・

「本日の講義はここまで」
「師、有難うございます」

本を閉じ一礼して出ていくマリー。
それは普通の家庭教師と同じような講義・・・
最初は警戒心で一杯だったアイルだが、講義は割と楽しい。
まさしく学問の講義であったが、彼女の教え方が上手いのか解りやすい講義であった。

「意外だな・・・普通の講義だとは」
「意味が分からぬ」

外に出た所を待ち構えていたディックにそう言われたマリーが一瞥して言い返す。

「お前さんの事だから公子をスパルタで鍛え上げるのかと思ったぜ」
「無駄な事だ・・・自信無き者を鍛えた所で潰れるだけだ」

マリーの答えにディックは感心したような表情となる。
この脳まで筋肉な彼女がそんな判断するとは思わなかったからだ。

「自信が無いねぇ・・・何となくは分かるが、どうするんだい?」
「一番の根本は・・・オスとしての本能を呼び起こす事だ」

あけすけの無い言葉だった。
確かに同行した時、魔術も見た事が無かったが、彼女から女の恥じらいも見れなかった事を思い出した。

「女を宛がうのかよ?」
「慎重にやらねば逆に自信を失うであろうな」

講義をしながら彼女は公子を観察しているようだ。
まずは少しずつと言う事だろうか。

「で、採って来たぞ……全く、アレをするつもりか?」
ディックは呆れた様子で自身がダンジョンで狩って来た獲物が山盛り状態の馬車を見る。モンスターは何れも魔法の触媒になるので傭兵にとっては戦乱が無い時には案外これで生活している。呪われし魔都は特にそのようなモンスターが豊富であるが同時に並の冒険者や初心者では動物系の餌になるか、植物系に苗床にされるか……どちらかである。“ビィールスの樹海”は地上に近い所ではそれほども無いが地下深くになる程呪われし魔都以上の危険な場所である。馬車のモンスターは何れも深い階層に居る奴らだ。
「私と師匠の見立てが合っているなら、彼は逞しくなる」
そう言うとマリーは囁く。

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