PiPi's World 投稿小説

マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 1
 3
の最後へ

マッスル・ウィッチ 3

何せ後継ぎがあれでは何時お家騒動と言う内乱が起きてもおかしくない……当然他国の魔道士も巻き込まれる。
「彼女を襲撃しようと思うなよ……俺は断るからな」
彼の視線の先を一級王宮魔道士ドワサンが見ると全身を包帯巻された屈強な男達がタンカに載せられて併設されている治療院へと消えていく。あれはもう傭兵騎士としては再起不能だろう。
「……ドワサン、彼女の魔法は”ロストマジック”の一種かもしれん」
「……ロストマジック?」
「実は彼女とは数年前にあるダンションにてパーティを組んだ事がある。そのダンションの名は”呪われし廃都”」
遥か昔に滅んだある王国の都……そこは広大なダンジョンがありお宝が眠っている噂がある。
「そこには“禁断の書庫があり、ロストマジックが封印されている魔道書”があると言う噂だな」
各国の魔道士は一度は耳にした事がある噂であるがそれを発見した者はいない。発見者が居るとしても本人は黙っているかそれとも国家により消されているか……そこに到達した者は魔道士として成功すると言う事で毎年一攫千金を狙って幾多の魔道士らが挑むが……その姿を見た者はいない。
「魔法と言うか東洋の徒手格闘技に近いんだよなぁ……肉体強化を魔力に使っているって感じだし」
「……おいおいっ」
「俺が言えるのはここまでだ。じゃ俺はビィールスの樹海に行くから」
ドワサンを茫然とさせて席を立つ傭兵騎士はニヤリとした。


あの後継ぎは恵まれていると


ヴァ―ランドの大公、ライオスはマリー到着の報にニヤリと笑った。
大柄で鍛え上げられた肉体を持つ軍人。
彼も若い頃は傭兵騎士として各地の戦場を駆け巡ったが、これはヴァ―ランドの貴族としてはごく当たり前の事である。

その傭兵時代に絶世の美女である妻を得たのだが・・・
まさかその子供が妻に似た華奢な少年になるとは思いもしなかったのである。

しかも公子、アイルは軍事に興味を持たない。
身体は鍛える以前に貧弱。
争い事は全く駄目と言うヴァ―ランド公子としてはあり得ない様相・・・
妻と子を大事にしているライオスだが、大公としては頭の痛い問題だった。

「傭兵騎士共は全く役に立たずか・・・」
「はい、手加減されましたな・・・道中オーガが多数殴り殺された程の猛者ですし・・・」

全身を包帯巻された屈強な男達は、この大公の差し金だったらしい。
大臣の報告を聞きながら大公は楽しそうに笑う。

因みに道中、最短距離だとオーガ鬼の密集生息地帯を通る事になる。
尚武の国ヴァ―ランドの傭兵騎士すら、そんな道は通らない所だ。

男なら喰い殺され、女子供なら犯される……オーガ鬼は凶暴さならモンスターでも指折りの存在だ。それをケロっとして倒す様子は正に異様と言える。
「ディックの言う通りだったな」
大公は酔狂でマリーを指名した訳でもない、万が一の時の手筈を整える為に彼女を指名したのだ。あの最凶のダンジョンを走破したパーティー“荒野の七つ星”に参加したのはディックであり、その時知り合ったのがマッスル.ウィッチの事マリーだ。
「マリー殿がお見えになりました」
「通せ」
女としては長身な部類だが、決して大きい訳で無い。
折れた三角帽子と足まですっぽり覆うローブ。
その装束と首からかけられたヘキサグラムのペンダント。
とび色の髪と瞳をした少女の顔は端正で、魔法少女と言う表現の方がしっくりとくる。

彼女が大公の前で作法にのっとり礼を取る。

「1級魔道士マリー・ユグドラル、お召しにより参上致した」

意思の強いはっきりした口調。
凛とした少女の声だが口調は男に近い。

「うむ、遠路はるばるご苦労である」

他所の格式高い国家であれば取次の者が対応するが、ヴァ―ランドにはそんな風習は無い。
大公が直接対応し、尚武の国だけに挨拶も簡素だ。

「ユグドラル師を我が子の家庭教師と任じたい」
「仰せ承った」

どちらも性格なのか単刀直入。
ライオスもマリーに満足そうな表情を見せた。

この姿であれば魔法少女にしか見えないが、そこはライオスも百戦錬磨。
羊の皮を被った雌獣であると肌が感じていた。

「仔細は宮魔道士ドワサンに聞くがよい」
「御意」

実に短いやり取りで謁見は終わったが、ライオスは満足していた。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す