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マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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マッスル・ウィッチ 26

燃える待ちよりも赤く、深紅のポニーテイルが風に靡く。

そして親指でびしぃ!と己を指さす若き女騎士、ソニア・グレン・ロッテンハイム、正にドヤ顔である…。

「どうだっ?」

ドヤ顔の背後から、ちゃりんちゃりんと得物具足の響きを交えた足音が迫る。

そして、拳骨。

「むぐぐ…何をなさるディック師範?」
「どうだっ?じゃねぇだろ!そんなんだからお前はソニアなんだよっ!」

拳骨と叱責の主、竜鱗が如き鎧…スケイルメイル姿の若き傭兵騎士、ディック。
ソニア女学生時代、剣術・軍事訓練での師範であった。

「丁度良かった、剣を預かって下さい。」
「よくねぇ!性悪三流貴族に弱味握らせてどーすんだ!」
「そういう器の相手だからこそ、向こうも約束を違える訳に行かなくなりましょう?」
「場当たりで行動すんな!何様だ!」

今度は強めに叩くディック。
何気にグーで、ゴツンと鈍い音がした。

「痛いでしゅっ!、師範っ!」
「痛くしてるんだ馬鹿者っ・・・お前が行けば更に時間稼ぎに使われるだろうがっ!」

そう怒ってからディックはドワサンに目をやる。

「魔導師殿、奴さんは?」
「我輩の使い魔で追尾させておるが、いい逃げっぷりですな」

どうやらドワサンは本隊からははぐれたと言いつつやる事はやっていたようで・・・
つまり荘園領主は既に逃げて、これは全部ある意味茶番だったと言う事になる。

「で、どうするんですかな傭兵隊長殿?」
「大公殿下からは『逃がせ』とのお達しだ・・・背後関係ごと葬り去りたいようだ」

そんな、大人の事情を口に出しながらディックはミンチになった肉塊を半眼で見る。

「馬鹿のせいで予定外の被害を被った・・・その上、更に馬鹿が被害を増やそうとしてやがる」

更なる馬鹿ことソニアが、ディックの言葉に真っ赤になる。

「しかしっ!、市民は人質を取られておりますっ!!」
「もう少し頭を使おうね、貧乳騎士殿」
「胸の大きさは関係ないっっ!!!」

憤るソニアをほほ無視して、ディックはドワサンと話す。

「で、屋敷はもぬけの殻だろうな?」
「恐らくは・・・我輩もそこまで『目』が回せんが仕掛けはしていってるだろうな」

最高級の実力は無くとも、少なくとも有能な部類に入るドワサンと、熟練の戦士であるが故に展開が読めるディック。
まだ新兵のソニアには理解できない話だ。

「おお・・・領主の行き先に隣国の旗が見えるな」
「やっぱそうか!・・・隣国の軍隊に我が国の民兵が攻撃仕掛けたらいい口実だな!」
「師範と魔導師殿・・・展開が読めません・・・」

二人だけの分かったような会話に口を挟むソニアにディックは真顔に戻って言った。

「お前さんも戦場の悲惨さは見ておくべきだ・・・屋敷に向かうぞ」

ディックの口調にソニアは胸騒ぎを感じながら、彼の後について荘園領主の屋敷へと向かったのだった。


屋敷はディックの言う通り、荘園領主達は逃げ去った後だった。
しかし、屋敷に踏み込んだソニアは口元を手で押さえて固まってしまった。

市民からの人質だった婦女子達・・・
引き裂かれた服にすすり泣く声。
股を血で染め茫然とする幼女もいた。

「こ・・・これは・・・」

凌辱の痕を見るのは騎士であるソニアとは言え、女としては辛いものだった。

「衛生兵っ!」

これを理解してただろうディックが叫び、そして女ばかりで構成された衛生兵が駆け寄り、彼女達の身体を拭いてやりながらシーツを被せてやる。

「なぜっ!、こんな事がっ!」
「戦争だからさ、戦争したい連中だからさ」

ディックは一応紳士らしく背中を向けてその場から離れる。
屋敷を正規兵で取り囲み民兵を入れなかったのはこの為であろう。

「怒り狂った民兵が領主を追い、そして領主を保護した隣国の軍隊に襲いかかる・・・確かにそう言う復讐はあり得る」
「左様、だが正規軍に襲いかかった暴徒を鎮圧し、元の領主の要請に応じて領地を回復・・・そこから先は外交になりますな」
「先に暴徒が襲いかかった事実があればあちらさんが有利だわな!」

ディックとドワサンの話。
そんな事で彼女達が凌辱されたと思うとやりきれない・・・

「こんなことが許されていいのかっ!!」

青臭いソニアの激昂にディックとドワサンは彼女を見るが、それはまるで憐れむような優しい顔だった。

「許されるさ、奴は領主だ」
「左様、件の領主が裁かれる意味は国家に対する反逆であるからの」

それが現実・・・
二人の言葉にソニアは唇を噛んで睨むしかできなかった。
そこで一つため息混じりに、ディックがソニアに言う。

「ソニア・グレン・ロッテンハイム・・・お前にケツ拭かせてやる」

今更何をと怒鳴りかけたソニアだが、ディックの持つ熟練傭兵の剣呑な雰囲気に気圧されて言葉に詰まる。

「民兵たちを暴発させずになだめろ・・・あとは軍と政治の仕事だ・・・奴らに余計な事をさせるな」
「うむ、これ以上の流血沙汰は肉団子がミンチになったので十分だろう」

二人を少しの間睨んできたソニアは騎士の礼を取り、駆け出す。
その背中を見ながらディックが肩をすくめる。

「さて、嬢ちゃんはできるかな?」
「今更何を言っているのか・・・性悪傭兵騎士殿」
「そいつはお互い様だぜ、陰険魔導師殿!」

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