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マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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マッスル・ウィッチ 25

しかしそこはアレなソニア、御伽話の女騎士になれると信じて疑わぬ『ソニア脳』だ。

「うむ!これから説得に行く所だ!」
「うぉおおおお!」

熱くなる伝令兵に、ソニアは馬の手配や部隊間の伝言など言い含める。

「名前は何といったか?」
「ハンザ・ルフトでありますっ!」

そしてソニアはとどめとばかり、上目遣いスマイルを作ってみせる…ソニアたんマジ女神!と映るだろうと。

「では、頼むぞ?」
「了解…。」

彼は軍人生活これまでにない厳格な敬礼動作を行った。
そして天空から深海まで支配する狂気の邪神に睨まれたが如く怯え、一刻も早くこの場から逃げ出さんと全速力で早馬を走らせた。

「ふむ…私の女子力も捨てた物ではないな…。」

そんな事はどうでもいい、ソニアには一応、市民を説得する算段があった。

元々は荘園領主側に非のある戦争、市民にまで武装させる程のダメダメ政策。
住民側の不満だってあるだろう、一か八かで煽ればこちらにつく可能性は大…。

「ああソニア嬢、間に合ったか。」
「うげ。」

血溜まり、挽き肉と白骨と内蔵のミンチ、甲冑の残骸。
具体的には元小隊長、二人の新兵を浅はかな愚策で弾幕に晒した報い、思い知ったか?

だが今は彼がどうこうではない。

「大体話は聞いたよ、ソニア・グレン・ロッテンハイム嬢。」

今更彼がどうやって伝令との会話とソニアのフルネームを聞いたかなぞ愚問だ。

肉団子を挽き肉に変えた武装市民は負傷した騎兵小隊を囲み、新たな私刑対象としている。

「市民諸君!静粛に!」

ソニアのよく通る声が燃える街に響き渡った。

「我々は強欲な荘園領主から…」

説得はソニアがヴァーランド公国の特使だという、全くの嘘ではないハッタリから始まった。
公国側に現地民間人と争う意志はないという旨、討つべきは領土拡大に欲を出した荘園領主だという旨を主眼とした演説。

事実、戦自体の優劣は決している。
後続の中隊規模の正規兵に加えて傭兵部隊、公国側はこの荘園領を制圧できるといった若干の脅し。

幼い頃から武将何たるかを学んだソニアの演説は、平均点というのがドワサンの見立てであった。

進軍の響きを察知したドワサンは『頃合いか』と細工に入る。

『強欲な領主を許すなー!』

群衆の中で誰か『誰だかよく解らない』一声は波紋となる。

そしてソニアの背後、歩兵・弓兵・工兵・傭兵、各部隊を指揮する騎士、輸送馬車…二百近い軍勢が集結せんとしていた。

「我々の家族がっ!、あの領主に囚われているのだっ!」
「アンタ達には恨みはないがっ!、家族を捨てられねぇんだよっ!」

軍団に怯みながらも彼らの意志はまだ強固だ。
しかし、やはり人質か・・・
実に有効かつ悪辣なやり方だった。
そこに転がる肉ミンチすら許せてしまえるレベルだった。
キモいけど。

「あの強欲がっ!、すんなり開放すると思うかっ?!」

ソニアの気合の一言に群衆がざわめく。
あ、さっきより堂々としてきたな・・・とドワサンもちょっと楽しそうに成り行きを見守る。

「今っ!、まさにっ!!、君たちの家族が危機に瀕してると何故思わないっ!!・・・ここで時間を使えば使う程っ!、君たちの家族は危機に晒されるのだっ!!!」

私兵と市民兵の混成部隊の守り。
すなわちそれは『捨て駒』だろう・・・さっきの自分と同じく。
そこから導き出される答えは一つ。
まともな軍隊と相手できない領主や側近たちは、逃亡する時間稼ぎに彼らを使ったと考えていい。
その時、足手まといをどうするかは火を見るより明らかだ。

未だ頑なな市民の反応に苛立ち始めたソニアの背後で、号令がかかった。

重歩兵横隊が防御姿勢を取り、すぐ後に弓兵隊を配置、この世界この時代なりの有効な銃兵対策だ。
(或いは攪乱戦法や水攻め等)

今の所は武器を構えず待機、一応の示威行動こそあれ尚武の国だからこそ、民兵との衝突は気を遣う。

そして若手の女騎士、ソニアの度胸に免じて、ここまでの配慮としていた。

しかし刻、一刻と決断は迫られる。

武人の不名誉であろうとも正義を貫かんが為、不義を討つか。
罪なき民衆は主の非道を知りつつも、玉砕攻撃に出るか。

「私にいい考えがある!」

そこでソニアはダマスカスの長短を剣帯ごと外し、次いで分厚い鋳鉄に毛皮を内張りしたアイアンヘルムを脱ぎ捨てる。

「人質交換だ!」

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