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マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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マッスル・ウィッチ 2

回転しながらジャンプすると、体を捻りリーダーを地面に向けて落下させる。
そして、凄い衝撃音と共に地面に頭から突き刺さるリーダー。
グシャリと折れた首を始点に身体が数回転し、地面へとゆっくり倒れ込む。

既に光の無い瞳が空を見る。
回転しながら見えた青い空・・・
リーダーの目にも染みる程の青い空が、彼の見た最後のものだった。

リーダーを屠り、ゆっくりと起き上がる魔道士、もとい筋肉美少女。

「我が魔術は無敵なり!」

(注)魔術は一切使用しておりません。

彼女は三角帽子とローブを身に纏うと、屍を残し颯爽と去って行ったのだ。

1級魔道士マリー・ユグドラル。
可愛い顔して非常識な筋力。
その肉弾攻撃は見る事ができるが、魔術(?)らしきものは見た事が無い・・・

そんな彼女の事を、人はこう呼ぶ。

鋼の肉体を持つ魔術師・・・

マッスル・ウィッチと・・・




都市国家セジューク。
魔術と学問の都と呼ばれ、魔道士ギルド本部が置かれる都市国家。
魔道士達による合議制で都市は運営され、世界各国に魔道士を派遣するのが都市の財政基盤となっていた。

そのセジュークの中央。
ギルド棟が並ぶ一角で、1人の老人が歩いていた。
特級魔道士にして元老院議員、オルスネルである。

そのオルスネル師はとある部屋に入って行く。
そこにいた者に声をかける。

「鍛練中かね、マリー・ユグドラル」

老魔道士の視線の先には逆さまになったマリーがニヤリと笑う。
逆さま・・・つまり彼女は逆立ちをしていた。
しかも片手、それも支え無しである。
しかも床には書物が置かれ、それを読みながら彼女は片手を曲げ、伸ばし身体を上げ下げしてるのである。

恐るべき筋力だった。

「はい、師よ・・・魔術の鍛練を行っております」

どう見ても筋トレです。

オルスネル師は更に皺を深くするが、もう慣れてしまったのかそれについてどうこうは言わない。
非常識な魔道士であれ、彼女が優秀であるのは確かだからだ。

「ヴァ―ランド公国からお主を指名で公子の家庭教師を依頼してきておる」

その師の言葉に彼女は逆立ちのまま考える仕草をした。

「ヴァ―ランド公国と言えば、魔道とは縁遠い尚武の国でしたな」
「うむ、その通りじゃ」

流石に年功を積んだ者であるだけに、喉から言葉が出かかっても『お主のような脳筋国家じゃ』とは言わない。

「公子ルイは11歳・・・学問好きだと言う事でお主に白羽の矢が立ったのじゃ」

別に嘘は言っていない。
ヴァ―ランドから依頼があったのも事実だ。
そして、公子ルイは確かに学問が好きな少年だ。
色白な美少年で華奢で大人しい。
まさしく貴公子だが・・・
そこは尚武国家ヴァ―ランド。
その主である大公は軍人であるべき国家で、彼は後継者として頼りないのだ。

だからである・・・
後は分かるな?的な依頼なのだ。

「分かりました師よ・・・このマリー・ユグドラル、一命に代えても公子に学問の神髄をお教え致そう!」
「うむ、期待しておるぞ・・・」

オルスネル師は期待を込めた瞳で弟子を見る。
本当に期待しているのだ・・・
彼女なら依頼主の要望通りの結果を得るだろうと。

こうして1級魔道士マリー・ユグドラルは颯爽とヴァ―ランドに向かい旅立ったのであった。


ヴァ―ランドまでの旅路は概ね平穏であった。
その道中はいくつかの魔物が生息するゾーンがあったが、マリーは躊躇せず最短距離を踏破・・・
1週間の行程を僅か4日で到着したのだ。

念の為に言っておくこの旅路を普通の一級魔道士なら護衛無しで一週間で到着出来ればラッキー、マリーの様に四日で到着になると師団クラスの騎士護衛を要する……如何に彼女が魔道士としては非常識である事が分かるだろう。そもそもオルスネル師が彼女を選んだ理由は……その非常識さを生かす為だ。



「あのマリー・ユグドラルを我が主君に学問を請うなぞもってのほか……なぜこうなったっ!」
「オルスネル師も我が国の不穏な空気を察したと言う事、普通の魔道士じゃムリムリ」
受け入れ先ヴァーランドのギルトにて慌てふためくカモ(=お得意様)の一級王宮魔道士を宥める傭兵騎士ディック、彼の言葉は事実だ。

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