野望の王国 3
「おいこれ、手入れしても見事にナマクラだな」
「それでいいんだよ、捨てちまうんだからな」
彼らの装備と何かしらの作戦・・・
おおよそ三倍の敵に何か策を用いるようであった。
・・・バノッサ軍砦
「申し上げます!、敵軍が進行中!、傭兵団を雇った模様!」
部下の報告に司令官は少し驚いたような表情となる。
「よく引き受ける傭兵団がいたものだな・・・して、規模は?」
「はっ!、兵数おおよそ100程ですが・・・」
報告した部下は若干相手を憐れむような表情で言う。
「傭兵団は装備もまともに揃ってない模様・・・どう見ても寄せ集めかと」
「ふふふ、それは哀れだな・・・軽く蹴散らしてそのまま全土を占領してしまうか」
部下に鎧を用意させながら司令官が笑う。
今までの戦いで相手の実力は分かっている。
それに、その程度の傭兵が加わっただけなら大したものではないだろう。
むしろ自分の戦歴が飾られる為の材料にしか思えなかった。
「よし、守備兵を最低限残すだけでいい!、全力で叩き潰してやるぞ!」
砦からバノッサ軍が出ると動揺した傭兵団からバラバラと逃亡者が出始めロシェフォール正規軍も動揺が広がっていた。
「馬鹿め!、我々が砦から出てこないと思ったか!!」
馬を走らせながら司令官が笑う。
脆すぎて話にならないぐらいだ。
「者共っ!、完膚無きまでに叩き潰すぞ!!、突撃っ!!!」
司令官の声にバノッサ軍が雄叫びを上げて突進していく。
ロシェフォール軍の指揮官が必死に叫んで立て直そうとするが、傭兵たちは我先にと散り散りに逃げていく。
それにつられるようにロシェフォール正規軍も崩れ始めた。
後方にある森へと逃げていくロシェフォール正規軍。
その足元には傭兵達が捨てて逃げたらしい装備の数々。
見事なまでの崩壊だった。
「よしっ!、者共、残党を狩り出せ!!」
バノッサ軍指令は指示を出し森に軍を進めた。
森の中でも傭兵があちこちに捨てた武器。
そして粗末な鎧までもが捨ててあり、中には正規軍のものまで混じっていた。
「大きく展開せよ!、包囲して逃すな!!」
バノッサ軍は軍を広く展開させ、山狩りでもするように進んでいく。
「いたぞ!、こっちだ!!」
「包囲せよ!!、仕留めるぞ!!」
森の茂みがざわつく場所。
茂みから少し覗いた揺れる槍先目掛けて一部の兵士が殺到する。
だが、そこで彼らが見たものは・・・
鎧兜を着けた人形に、立てられた槍には小動物が括りつけられていた。
そして、その瞬間・・・
風斬り音と共に無数の矢。
「罠だと!、小癪な!!、所詮少数だ!、盾で防げ!!」
指令は指示を出すが、矢は確実に兵士達を貫いていく。
「盾で防ぎながら応射せよ!!」
盾を持った兵士が防御陣を作り、ロングボウ隊が弓を引き絞る。
しかし、ここは森の中。
障害物で盾は陣形の密度を上げれないし、ロングボウの取り回しはしにくい。
しかし相手は的確に矢を射掛けてくる。
「指令!、敵はクロスボウの模様!!」
「ぐぬっ!、小癪な!!」
ロングボウと較べて短い矢はクロスボウ特有のもの。
射程威力はロングボウに劣るが、取り回しは良い。
そして相手は、ロシェフォール正規軍とは比べ物にならない練度で矢を射掛けてきたいた。
「密集せよ!、森の外まで下がるぞ!!」
しかし、多くの兵を散開させてしまい思うように動けない。
次々と兵士達が矢に倒れていく。
そして何より左右に展開した騎兵だ。
森の中では思うように進路を変えれない。
そこへ現れた赤い鎧の一団。
進路変更に手こずる騎兵目掛けて槍を繰り出す。
あちこちで起こる怒号と混乱。
見事なぐらいまんまと伏兵戦術にしてやられたのだ。
勿論、兵数が足らない傭兵主体の編成なので前もって森に武具や仕掛けを伏せ、自分たちで敵を吊りロシェフォール正規軍を盾代わりにして着替えて伏せると言う、練度あってこその強行軍をやってのけた訳だ。
バノッサ軍指令の過信や『弱い』ロシェフォール軍あってこその作戦な訳だが・・・
この伏兵奇襲で百人近い死傷者を出しながらも、何とか森の外まで撤退するバノッサ軍。
そこに待ち構えていたのは、赤い甲冑の一団だった。
「うおおおりゃぁぁぁっ!!」
その数50名程。
戦斧を構えたアラドが雄叫びと共に突進し、赤い奔流がそれに続いていく。
「敵は多くない!、蹴散らせっ!!」
指令が叫ぶが、赤い奔流がバノッサ軍に襲いかかっていった。
暴風のようなアラドの斧が兵士を吹き飛ばし、なぎ倒していく。