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野望の王国
官能リレー小説 - ファンタジー系

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野望の王国 4

そして森からはクロスボウを持った赤い甲冑の傭兵達を率いたジェドが飛び出してくる。
一斉に矢を射掛けて抜刀。
そのままジェドを先頭に切り込む。
アラドが暴風なら、ジェドは旋風と言った所か。
凄まじい捷さの剣が振り下ろされる度にバノッサ兵が倒れていく。

「ひぃっ!、化け物だっ!!」

「こんなの勝てねぇっ!!」

バノッサ兵達は浮足立ち我先にと砦の方へと走っていく。

「ぐぅっ!、逃げるなっ!、戦えっ!!」

そう言う司令官だったが、彼自身も馬首を巡らせ逃げにかかっていた。
その間もジェドとアラドによる旋風と暴風が吹き荒れ、多くの兵が血に染まり大地に叩きつけられていく。

その時である。
森から騎兵が踊り出て赤い傭兵団へ突っ込んでくる。

「撤退する時間を稼げ!!」

森から現れたのは、バノッサ騎兵。

「よしっ!、一旦砦に戻り立て直す!!」

それを好機と見た司令官は怒鳴りながら馬を走らせる。
付き従う兵は既に50人程まで減っていた。
それでも騎兵を盾にしつつ戦場から離脱していく。

騎兵達も傭兵団を牽制しながら殿をついていく。
だがジェド達は騎兵に追撃すること無く見送ったのだ。

「さてと・・・ぼちぼちと追撃だな」

「ロシェフォール軍は再集結に手間取ってるがいいのか?」

楽しそうな表情で騎兵を見送るジェドにアラドが聞く。

「まぁ、こうなるとは思ってたけど・・・待ってる時間はないだろ?」

「うん、これも『予定通り』・・・あとはライエルが上手くやってくれるから仕上げに入ろう!」

ジェドがトリスを見て問うと、トリスはそう答えた。

サリッサには作戦の概要をある程度は伝達してある。
勿論、信頼関係はまだ無いので半信半疑のサリッサにトリスは『こっちを見捨てて逃げていい』と言ってある。
だが、彼らの逃げっぷりを見る限りは信用なんて程遠く、相当な距離を逃げているので帰ってくるのは時間がかかるだろう。

この時点で残存兵力は傭兵団と同程度。
砦に籠もる事を考えれば、役に立つかは別として兵力が多い事に越した事は無い。
だが、ジェドもトリスも正規軍を待つ気は無かった。
傭兵団を集結させると、すぐに追撃に移ったのである。

一方逃げ帰ったバノッサ軍は砦へと撤退していた。
司令官と側近達の騎馬を先頭に歩兵隊が必死に走り、砦内に駆け込む。
かなり遅れるようにして殿の騎兵隊が砦へと走る。

「騎兵隊の後!、敵の追撃です!!」

「全軍収容したら門を閉じろ!!」

追撃はあるようだが、騎兵との距離を考えれば十分に門を閉じて防衛に備えれる。
司令官は疲れ果てながらも安堵の表情を浮かべていた。

そして、最後十数騎程の騎兵が砦に駆け込んでくる。

「よしっ!、門を閉じよ!!」

兵士達が砦の門を数人がかりで押して閉めていく。
しかし・・・

「ぐあぁっ?!」

馬から飛び降りた殿の騎兵達が、いきなり門を閉める兵士達に襲いかかる。
瞬く間に兵士達は倒れ、騎兵達は来ていた鎧を脱いで投げ捨てる。
そこから現われたのは、赤い甲冑だった。

「てっ、敵だぁっっ!!!」

「おう、敵さんだぜ、覚悟しな!」

槍を構えたライエルが不敵に笑う。
彼らは森で仕留めた騎兵の装備を剥ぎ取り、司令官を逃がす振りをした訳だ。
よく見れば分かったのかもしれないが、助けられた事で誰も疑わなかったのだ。

ライエル以下、若くとも歴戦の傭兵達はここぞとばかりに暴れ回る。
不意を突かれ、練度も違うバノッサ軍は敵う訳も無く、いいように倒されていった。

「打ち倒せっ!、門を早く閉めろっ!!」

悲鳴のような指令の声。
確かにライエル以下、侵入者は十人程度。
まだ砦には百人近い兵がいる。
しかし、門前の狭い所や遮蔽物を上手く使う彼らに、バノッサ軍は手こずりむしろ被害を増やしていった。

そして、そんな間にジェドの本体が押し寄せる。

「待たせたな!、ライエル」

「早すぎるぜ、ジェド・・・全部片付けちまう予定だったんだがな」

軽口を叩きながら合流したジェドとライエル。
ジェドは抜身の剣を肩に担ぎながら傭兵達に怒鳴る。

「お前らっ!、徹底的にっ!!」

そこで言葉を一度止めるとニヤリと笑い、左の親指を下に向けた。

「殲滅しろっ!!」

傭兵団がまんまと門を奪ったため、バノッサ兵達に動揺が広がっていた。
そして、ジェドがこの合図を出したとき、傭兵団は文字通り修羅のごとく大暴れする。
出てくる兵士を見つけ次第に叩き斬り、討ち伏せ、突き殺す。
壁の上や見張り塔から矢を撃つ守備兵もいたが、彼らもクロスボウで撃ち返され、ある者は転落し、ある者は顔に矢を刺されて痛みに叫びのたうち回る。
バノッサの指揮官が降伏を申し出るまでに、30分もかからなかった。
縛り上げられた敵将兵を前にして、ジェドが言った。

「さて、どうすんだ?」
「全員首を落とすか?」

アラドとライエルは、威圧するように剣を構えたり槍を振り回したりしている。

「指揮官殿以下、捕虜として連れ帰りましょう。後の交渉もありますから」
「なるほどな」

ジェドがニヤっと笑った。
結局トリスの意見通り、生き残ったバノッサ兵20名ほどが捕虜として後送された。
ほっとした彼らは、後送された。後で領地争いの解決交渉のカードにするためだ。


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