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野望の王国
官能リレー小説 - ファンタジー系

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野望の王国 2


「よくきてくれました・・・約束の報酬は必ず支払います」

彼女の言葉に恭しく頭を下げるのはジェドだった。
ジェドの礼儀正しい振る舞いに後方に控えるトリスは感心する。
娼婦街生まれのジェドだが、娼婦の中には没落した高貴な生まれもいる。
端正な顔立ちで『娼婦街の王子』なんて呼ばれ、そんな娼婦達からも可愛がられ色々教わったジェドは、そう言う生まれ育ちの割には教養がある。
だが驚くべきは、普段の粗野な様子にも関わらず、こんな場面でも平気で使える事だ。
それにはいつも感心させられていた。

トリスが観察する所、この若い女主人はジェドの立ち振舞に安心はしてるようだ。
無論、臣下達の中にはあまりいい顔をしてない者もいるが、これは当然なのでさほど気にする事では無い。
傭兵の領主に対する信頼基準は金だし、領主サイドは働き具合だ。
まだ働いていない以上、信頼関係が無いのは当然だ。

「そのお言葉を頂けましたら、我々も働きがいがあると言うもの」

言葉と共に顔を上げるジェド。
どことなく優雅で品がある様子に、女官達が色めく。
これもいつもの事だが、高貴な貴族の落とし胤と嘯いても通用するぐらいの所作なのだ。
傭兵としての実力だけでなく、彼がここまで成功できたのもこれがあっての事なのも間違いない。

そして、この様子だと第一歩としては成功だろう。
次は実際に働きを見せないといけない。

「まずは所領の奪還から始めましょう」

ジェドの言葉に家臣の一人が声を上げる。

「百人程の規模の傭兵で可能なのか?・・・我々の五百の兵でもできぬのだぞ!」

ジェドは笑みでもって言葉を返した。

「百人には百人の戦い方が御座います・・・まずはご覧あれ」

・・・こうしてジェドの野望の第一歩が始まったのだった。



まず彼らが向かったのは隣接するバノッサ男爵家が占領するロシェフォール東部地域。
彼らはそこに砦を築き拠点としていた。
ジェドの率いる傭兵百人とロシェフォール軍百人。
バノッサ軍は三百程と言う。

ロシェフォール軍は五百まで出せると聞いたが、トリスの進言で丁重に断った。
それで百人だけとなったが、これには期待してなかった。

「負けるのも頷けるな」

呆れ気味にそう言ったのはライエルと言う少年。
彼もジェドの幼馴染で槍の使い手である。

彼の見立て通り、ロシェフォール軍は強さが全く感じられない。
領主交代の動揺はあるのかもしれないが、練度士気共にかなり低い。
やる気がありそうなのは指揮官ぐらいだ。

「無駄なやる気だね・・・」

トリスがため息混じりに言う。
ロシェフォール軍の指揮官は女騎士。
それも彼らより若い少女だ。
馬に跨る様子はそれなりなので実力は一応あるようだ。
彼女の名前はサリッサ。
女ながらロシェフォールでは屈指の剣の使い手だとか。
しかし、最初の軍議で彼女の軍略が並以下だと理解できたので、ロシェフォール兵共々役に立たないとトリスは見ていた。
幸いと言うかバノッサ側は傭兵を雇っていない。
雇うのが無駄なぐらいロシェフォール軍が弱いのだろうし、こちらが傭兵雇う情報があるのだろうが雇った形跡もない。
つまり完全にナメているのだろう。

ならば仕事はやりやすい。
正規軍となら恐れる要素など全くないぐらい傭兵団の練度は高い。

「一体私達に何故こんなものを運ばせるのだ!!」

敵地も間近にさしかかる頃、その無駄にやる気のある指揮官をどうしてくれようか考えていたトリスの所にサリッサが我慢できず怒鳴りこんでくる。

呆れ顔を隠そうとしないライエルにうんざりするトリス。
ジェドはさすがと言うか笑みすら浮かべていた。

「それが今回の勝利の鍵です、だからこそ貴女に託している」

ジェドの言葉に少し赤くなるサリッサ。
これはジェドがいい男と言うだけでなく、全く内容を理解してないからと言うのもあるだろう。
理解してないと言うか、彼らも説明はそうしてない。

「それにその装備はなんだ!、やる気はあるのか!」

真っ赤になって怒るサリッサにもジェドは表情を変えない。
彼女の言うとおり、彼らの装備はいつもの赤い甲冑ではない。
ボロボロでバラバラの安物装備だ。

「これも勝つための装備・・・まぁご覧あれ」

ジェドは恭しく一礼すると、貴婦人を扱うようにサリッサの手を取る。
全くもって呆れる程様になっていた。
それでサリッサは更に真っ赤になる。
彼の所作が様になりすぎて二の句が継げないぐらいだった。
上手にその場から追い出すジェドに、トリスとライエルは顔を見合わせて苦笑する。
戦いが終わるまで大人しくしていてくれればそれでいいが、彼女が唯一の懸念材料だった。

「あれはきっとな、生娘だからだぜ」

彼らの傍らで黙って斧の手入れをしたいた巨漢の少年が口を開く。
彼の名はアラド。
トリス達と同じくジェドの幼馴染で頼りになる斬り込み隊長だ。

「一発コマせば大人しくなるんじゃねーか?」

「お前らしいが、ああ言う女は重いぞ」

貧民街育ちのアラドの思考にライエルが突っ込みを入れる。
まともな教育なんて受けてはいない彼らだが、決して馬鹿ではない。
ライエルは理性的にアラドは直感的だが、割と正しい答えを導き出せる。


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