ホムンクルス 3
「ふーん。」
「あれ?反応薄いね」
サキは意外だった。今回の戦争で同じ駐屯地に配属(隷属)された仲間であるため、少しは驚くかと思ったのだ。
「別に、興味ないし。」
いつも通りの素っ気ない反応だったので、サキはとりあえずふざけることにした。
「そっか、興味あるのは私こと『サキお姉ちゃん』だけってことだね?嬉しいよ、レミナ。」
「違うし!」
お調子者な一面を見せたサキに、レミナが大声で反発する。
「…ひょっとして、好きな男とかできたの?」
「そんなのできるわけないじゃない。毎日お腹空いてそれどころじゃないわ。…男なんか、くさい精液ぶちまけるだけの生き物だし。」
「あはは…」
そのくさい精液を、さも美味しそうに恍惚の表情で飲んでいるというのに、本人は気づいていないようだった。ホムンクルスは精液には逆らえないのだ。自らが生きるために必要な液体である以上、今の発言はレミナ自身の強がりだと捉えるしかないだろう。
「でもレミナって、精液飲んでる時は…」
サキが言いかけた瞬間、レミナの目がギラリと光った。
「それ以上言ったら殺すわよ」
気づいていたようだった。
「はーい。言いませーん(ツンツンしてるレミナ可愛いな)」
ホムンクルスにとって、精液は栄養源であるとともに媚薬でもあるのだ。精液を飲んでイッてしまうホムンクルスもいるほどである。
それこそ、ホムンクルスがより男たちに対し性的な奉仕に励むようにプログラムされたといって差し支えない。
レミナのように、精液による快楽を強く否定しているホムンクルスにとっては、迷惑どころか呪いに近いのかもしれないが。
「嫌だな、こんな生活…」
「レミナ…」
もうじきに、戦争の火蓋が切って落とされる。
戦争する相手国は、フォルランドというらしい。魔物を使役しており、隣国への加害行為から、各国の同盟国からアバスタ国へ応援の依頼があった。
好戦的なフォルランドを鎮静化し、魔物を駆逐するという名目で遠路遥々来ているわけだ。
「仲間を、殺したくないな…」
そうである。アバスタ国の密偵による情報だと、フォルランドにもホムンクルスがいるらしい。
同じホムンクルスであっても、立場が違えば敵同士として闘わねばならないのだ。
「そうだねぇ、でもレミナ、人間だって人間を殺すんだよ。ホムンクルスだってホムンクルス殺しても良いじゃない。辛いのは、向こうさんのホムンクルスも一緒だよ。」
レミナの表情は曇ったままだ。
サキは言葉を続ける。
「大丈夫だって。レミナが幾ら命奪おうが、戦争なんて皆立場が違えばどの生き物もそうなんだから。私たちだってそうするしかないんだよ。」
涙も枯れ果てたといわんばかりに、表情を曇らせる。
「『こんな悲しい定めを背負わせた奴に目にもの見せてやる』んでしょ。こんなところで立ち止まれないじゃない。」
それは、レミナが以前サキに言った言葉だった。サキは
「レミナがどれだけ多くのホムンクルス殺そうが、私は軽蔑なんかしないよ。私はレミナが好き。変に男に媚びようとしないところも、(精液飲むの大好きなところ、)意志が強いところも、(クリ剥かれるの弱いところとか、)私皆知ってるから。レミナは、自分の目標に向かって突き進んで欲しいな。私は。」