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既に詰んだ領主に転生した男の物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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既に詰んだ領主に転生した男の物語 10

だが特に妻に対して怒りなどは覚えないし、また息子が可哀想だとも思わない。
なぜなら彼自身、それを嫌がっている様子は見受けられないからだ。
いや、むしろ息子は新たに知った快楽に夢中だ。
今日なんて誰も居ない部屋で掃除中のメイドと暖炉から下半身だけ突き出して犬のようにサカっていた。
止めさせる事も出来たが最中に声を掛けるのも野暮と思い、そのまま静かに部屋を後にした。
まぁ、男女の交わりを知ったばかりの者が、その悦楽の虜となってしまうのは仕方の無い事だ。
生涯を錠前に捧げると誓ったこの私でさえ、長い人生の内のほんの一時期…まだ性交の快感を知ったばかりの頃、その虜となって足繁く娼館へと通ったものだ。
昔の話…まだ妻と結婚する前の事だ。
だが今の私は錠前ひとすじ、他の物など目に入らない。
これはつまり、私の中で人としての理性が獣の本能を上回ったという事なのだろう。
…という訳で、私は息子を咎める気は無いし、そもそも私には彼の性行動を非難する資格も無い。
何故なら彼が人並み外れた早熟で、僅か10歳にして既に大人顔負けの巨根で、毎朝“朝勃ち処理”が必要な程の精力絶倫なのは…全て私のせいなのだから。
私は鍵付きの引き出しから葉書ほどの大きさの小箱を取り出し、机の上に置いた。
これなのだ。
全ての元凶(?)は…。
私は小箱の中身に思いを馳せ、感慨深げにフタを撫でながら言う。
「…いつか、あの子に話さなければならないな…この箱の中の物の事…そして私の犯した罪を…」
そして私は小箱を引き出しに仕舞い、鍵を掛けた。


夕方ごろ…
「ねぇ、あなた。今夜の王宮での舞踏会に着ていくドレス、どれが良いかしら?」
妻に訊かれ、私は答える。
「君なら何を着ても似合うよ(どれ着ても同じだろ)」
「それもそうね。じゃあこれにするわ。アンナ、お願い」
「かしこまりました、奥様」
「……」
私達は端から見れば、どこにでもいる仲睦まじい貴族の夫婦だ。
だが実際は夫婦の仲は冷え切っていた。
いや、冷え切っているという表現は適当ではない。
私達は険悪ではないからだ。
ただ夫婦の営みは、ここ数年まったく無い。
お互い求めない。
まぁ次代の伯爵は確保したし、当主としての義務は果たした。
予備は…要らないだろう。
混乱の元だ。

それから数十分後…私はようやく身支度を整え終えた妻と共に息子の部屋へと行く。
妻はまるで恋人に会いに行くかのような表情だ。
着飾った姿を息子に見せたいのだろう。
もう妻は完全に息子を男として見ているのだ。
正気だろうか?
親子だぞ。
まるで獣ではないか。
「クリストフ、私達はこれから王宮の舞踏会に行って来るよ」
「アンナ達の言う事を良く聞いて良い子にしているのよ」
「はい!お父様、お母様」
「良い子ね…ところで、どう?似合うかしら?」
妻は息子の前でドレスの裾をひらめかせてクルリと一回転して見せた。
「とても素敵です!お母様」
「本当に?クリスにそう言ってもらえると嬉しいわぁ♪」
「…おい、そろそろ行こう。もう舞踏会は始まってる…」
「もう…分かってるわよぉ…せっかちなんだから…じゃあねクリス、行ってくるわ♪」
「いってらっしゃいませ!お父様、お母様」
そして私達は馬車に乗り王宮へと向かった…。


王宮は既に着飾った男女でごった返していた。
妻の身支度に時間が掛かったせいだ。
そもそも華やかな席や人付き合いが好きではない私としては、舞踏会だの夜会だの園遊会だのというのは、開始直後のまだ人の少ない時間帯に行って主催者に挨拶だけしたら早々に帰って来るのが理想的だ。
妻は私とは正反対で、社交的でお喋りが大好き…という訳で結婚してからの私の最重要課題の一つとして“妻がダンスやお喋りに興じて楽しく過ごしている間、どうやって時間を潰すか”というのがある。

会場に入ると何人かの男女が話し掛けて来た。
「やあ、ウォルコンスカヤ伯爵夫妻」
「ご機嫌よう」
「伯爵、何だか随分と久し振りに会った気がするわ。奥様とは頻繁に会ってるのに…変ねぇ?」
それは私がいつも会場から離れた人気の無い場所で暇を潰しているからだ。
「ははは…皆さんもお元気そうで何よりです」
とりあえず適当に笑ってごまかす。
「ご夫人、相変わらずお美しいですなぁ…」
一人の男が熱い視線を妻に向けている。
「あらぁ、侯爵ったらお上手なんだからぁ♪」
「いかがでしょう?私と一曲踊っていただけませんでしょうか?」
「ええ、お相手させていただきますわ」
「ありがとうございます!伯爵、ご夫人をお借りしますよ」
男と連れ立って会場の真ん中の方へ行く妻の背を見送っていると、隣にいた中年の婦人が耳元で囁いてきた。
「…お気を付けた方がよろしくてよ。あなたの奥様はお綺麗だから…」
「…何の事です?」
「だから…言い寄って来る殿方も多いでしょう。場合によってはスキャンダルに発展しかねないわよ。もちろん考えたくない事でしょうけれどね…。こんな事を申し上げては失礼かも知れないけれど、奥様、結婚前は随分と艶聞を振り撒いていらっしゃったようだから…」
…何が言いたいんだ、この女は?
一見こちらを心配しているような口振りだが、その表情と口調は明らかに楽しんでいる。
「おい、やめなさい。ウォルコンスカヤ伯に失礼だろう」
話を聞いていた彼女の夫が見かねて諫めた。
「あ〜ら、私は伯爵を心配して忠告して差し上げてるのよ。つまらない事で建国以来の名門ウォルコンスカヤ伯爵家の家名に傷が付いたら大変ですもの」
「よさないか。…伯爵、済まないね。気を悪くしないでくれ」
「構いませんよ。少なくとも今は妻が他の男性に目移りする事は無いでしょう。お気遣いどうも、夫人」
まさか手前の息子と男女の関係だなんて想像も付かないだろうな。

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