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既に詰んだ領主に転生した男の物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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既に詰んだ領主に転生した男の物語 18

そんな事を考えながら歩いて行く内、僕とシャルロッテはいつの間にか庭園の中でも人気の無い所に来ていた。
大公の館の敷地は本当に広大で、大きな池やちょっとした森まである。
ふと茂みの影から数人の声がした。
子供のようだ…。
「へへへ…このブタめ!」
「ブウブウって泣いてみろよ!」
「うぇ!うえぇ〜!や…やめてよぉ〜!」
見ると、貴族の子供4〜5人が1人の太った子供をイジメて遊んでいた。
イジメの中心になっている少年は背が高く顔にソバカスがある。
あれは確かロバート・オーギュスト…歳は確か13…オーギュスト大公の一人息子だ。
「まったく…どこにでもあるんだなぁ、イジメって…」
溜め息混じりにそう言うと、シャルロッテが袖を引っ張って言った。
「い…行きましょうよ…あんなの、見ていたくないわ…」
「そうだなぁ…」
僕は彼女に訊いた。
「…君は自分の事を“大人”だって言ったよね?本当の大人なら、こんな時どうすると思う?」
「え…?」
「見てろ…」
僕はスタスタとロバート達の方に歩み寄っていった。
「…ん?何だお前?」
「名乗る程の者じゃないよ。ただの通りすがりさ」
「フフン…お前、僕の家来にしてやる。一緒にこのブタ野郎をイジメるのを手伝え。でなきゃお前をイジメるぞ」
得意気に言うロバート。
「なるほど…大勢で一人をイジメて楽しいか?」
「ああ!楽しいね。最高の気分だ」
「はぁ…可哀想なヤツだな…」
「な…何だと!?今何て言った!?」
「他人を痛め付ける事が楽しいだなんて…哀れだって言ったんだよ」
「こ…こいつ…ぶっころす!!」
ロバートはキレて殴りかかって来たが、僕はサッと身をかわして逃げた。
「待てぇ!!」
顔を真っ赤にして追い掛けて来るロバート。
僕は逃げながら言った。
「なぜお前は人を傷付けるのか…その理由が自分で解るかぁ!?」
「はあ!!?そんなのに理由なんてあるかぁ!!僕はフェルシオール王族オーギュスト大公の御曹司だぞ!!力でもって他人を支配する権利を神から与えられた人間なんだ!!」
「ハッ…それを本気で言ってるとしたら本当に哀れなヤツだな!」
「コ…コノヤロウ!!?」
「教えてやるよ!!!」
「…っ!!?」
僕は不意に立ち止まり、振り返りざまに言う。
ロバートも慌てて止まったため、後ろにつんのめって尻餅をついてしまった。
「お前が人を傷付けるのは…お前自身が傷付いているからだ!!」
「は…はあ!?な…何を訳の解らない事を言ってる!?この僕を傷付ける人間なんて、このフェルシオール王国には一人もいないぞ!!」
「…いや、傷付いているのは体じゃない…ここさ…」
僕は自分の胸に手を当てる。
ロバートは何も言わない。
「…知ってるよ。君のお父さんとお母さんは仲が悪くて、顔を合わせればケンカばかりなんだってね…お父さんは女遊びや衆道趣味が過ぎて、近頃じゃあ平民区の娼館にまで出入りしてるそうじゃないか…」
「…ど…どうしてそんな事を…!?」
「…一方、お母さんは他の貴族や使用人とまで関係を持って、次々と男をとっかえひっかえベッドに引っ張り込んでる…そして君は広い屋敷の中、一人ぼっち…誰も君を見てくれない…誰も君を愛してくれない…」
「…や…やめろ…」
「寂しかったんだよな…本当は…親に甘えたかったんだろう…お父さんと、お母さんと、君が笑って食卓を囲む…そんな幸せな家庭を夢見ていたんだろう…でも現実はどうにもならない…家族はバラバラで君は孤独…」
「…うぅ…うぅぅ…」
「…辛かったろう…今まで…もう我慢するな…耐える必要なんて無い…君は今まで良く頑張った…」
「…ううぅぅぅぅ…」
ロバートの顔が見る間に崩れていった。
そして…
「…うああああぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」
…ついに彼は号泣した。
「…おいで…辛かったね…寂しかったね…」
僕が両手を広げて促すと、彼は体を屈め、僕の胸に顔をうずめて泣きじゃくる。
「「「……」」」
他の子供達…イジメられていた太っちょも、シャルロッテも、その様子をただただ呆けたようにポカーンと見ていた…。

「クリス、あなたって凄いのね。見直したわ…♪」
…あの後、ぐずるロバートを引き離して彼らと別れた僕とシャルロッテは池の畔で佇んでいた。
彼女はさっきとは打って変わって尊敬の眼差しを僕に向けている。


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