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既に詰んだ領主に転生した男の物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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既に詰んだ領主に転生した男の物語 12


私は会場を抜け出して人気の無い庭園へとやって来た。
腰掛けに座って、懐から小さな錠前と鍵を取り出す。
私は鍵を差し込み、回した。
 カチャン
はぁ…落ち着く。
この素晴らしさが理解出来ないなんて…思えば先程の排便者達も、政争に明け暮れる軍や元老院の連中にしても、上辺だけで中身の無い虚飾の社交に夢中の妻や他の貴族達にしても、何と哀れなものではないか。
錠前…それは人が産み出したあらゆる事物の中で最も尊い存在。
何という奇跡…!
錠前…それは神が人に与えた禁断の果実だ(意味不明)。
私は錠前さえあれば、もう何もいらない。
もし許されるのならば、私は地位も財産も領地も領民も家族さえも捨てて、錠前だけに全てを捧げる人生を…

「ねぇ、何それ?何かの鍵?」
「…うおぉっ!!!?」
とつぜん後ろから声を掛けられ、私は素っ頓狂な声を上げてしまった。
振り返ってみると、一人の淑女が興味津々といった様子で私の手の中の錠前を覗き込んでいた。
「…脅かさないでくださいよ…エルヴィン公爵夫人…」
そこに居たのは、つい先程まで会場で大勢の人々に囲まれていたエルヴィン公爵夫人・ルクサーナその人であった。
「…何かご用ですか?」
「別に…。抜け出して来たのよ。あなたと同じ…。あんな所に居たら息が詰まるわ。私に向けられる視線…嫉妬、羨望、侮蔑、好意、悪意…もうウンザリなのよ。だから逃げて来たの。そしたらそこにあなたが居たって訳♪」
「いやスルーしてくださいよ…」
「だってぇ…私あなたの事が以前から気になってたんですもの…」
「……は?」
それは、どういう…?
…いや!惑わされるな!
コイツは今まで多くの男達を手玉に取ってきた毒婦!
「き…気になっていたのは、私よりも、我がウェストリーニ家の財産ではないのですか…?」
ヤバい!少し噛んだ!
動揺を悟られてしまう!
…だが、彼女が口にした言葉は意外な物だった。
「あら、ひょっとして警戒してる?…なら安心して。私もう一生遊んで暮らすのに困らないだけの資産は手に入れてるから、これ以上増やそうとは思ってないわ」
「……私は今あなたが不幸になる姿を見たいと思いました」
これは率直な気持ちである。
「…正直なのねぇ…。そういう所、良いわぁ…」
「はあ…」
「隣、良いかしら?」
「ど、どうぞ…」
彼女は私の隣に腰を下ろした…てゆうか近っ!
私達の間は僅か数センチ…少し身体を傾けるだけで触れ合う距離だ。
妻以外の女性とこんな近距離まで接近したのは何年ぶりだろう。
向こうの体温すら感じられる。
香水だろうか…良い匂いがする。
心臓がドキドキと高鳴る…。
高鳴る?
なぜ?
まさか…私は…ときめいているというのか?
この女に…。
…いや!そんなはずは無い!
私は錠前に人生を捧げると誓った身…今さら女に欲情などする訳が無い!
そのような低俗で下劣な感情、今の私は持ち合わせていない!
…でも…
この気持ち…何だろう…?
…そんな私の心の中の葛藤など知る由も無い彼女は夜空を見上げて言う…。
「…多くの人間が私に対して、イヤらしい視線か、もしくは汚い物でも見るような視線を向けて来るわ。他にも色々あるけど、そこには必ず何らかの感情が伴っている。でもあなただけは違う。私を見る目に何の感情も込もっていない…ただそこに在る“物”をありのまま見ているって感じ…」
「はあ…」
言われてみれば確かに他の連中は彼女について色々あーだこーだ言うが、私は“あぁ、居るなぁ…”程度にしか認識していない。
「…その無関心さが、私には心地良いのよねぇ…」
「……」
私はこの元娼婦の公爵夫人に少しだけ同情した。
好意であれ悪意であれ、嫌でも他人の注目を集めてしまうというのは…よくよく考えてみれば結構キツいかも知れない。
そりゃあ人間、ある程度は他人から注目されるのは良い気分だ。
だが限度がある。
彼女の場合、常に世間から監視されているような状態だろう。
地獄だ…。
私なら発狂するまで一週間と持つ自身が無いな。
だから私は言った。
「…どんな視線を向けられようと、気にしない事です。やつらは皆、排便者なのですから」
「排便者?…あぁ、ひょっとして“クソッタレ”って言いたい?」
「有り体に言えばそうなりますがね…」
「フフ…あなた、意外と面白い所あるのね。ますます気に入ったわ♪」
「面白い事を言ったつもりはありませんが……んんっ!?」
私の言葉は途中で途切れた。
彼女の唇が私の口を塞いだからだ。

……

しばし静寂の時が流れた。
どれぐらいの間そうしていたのだろう?
一分にも満たなかったかも知れないし、たっぷり五分はあったかも知れない。
だが私にとっては正に永遠にも思われ、一方ではほんの刹那にも感じられる…不思議な時間だった。

やがて、私の唇で感じていた彼女の唇の暖かさ、湿り気、柔らかさがフッと途切れて、私の視界の殆どを覆い尽くしていた彼女の顔が離れていった…。
「……あ……あの……」
咄嗟に何か言おうとして口を開いたが、言葉が見つからず口ごもる私を、公爵夫人は微笑みながら見つめていた。
…と思っていたら、彼女はおもむろにスッと立ち上がり、腰掛けに座った私の前にしゃがみこみ、私の両脚を開いた。
「ウフ…♪」
「???」
これは……えっ!?
まさか…っ!!?
次の彼女の行動は…予想通り。
彼女は私のズボンの股間のボタンを外し始めた。
「…こ…公爵夫人!?何を…!?」
「良いから…じっとしてて…」
「こんな場所で…正気ですか…!?人に見られでもしたら…!」
私は慌てて辺りを見回す。
周囲に人は……今は居ない。
「あら、いつ見られるか分からない所でするなんて…興奮するじゃない♪」

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