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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 98

少し待つと、結界に裂け目ができ始めた。
豊は道筋を見つけると、ひょいひょい踏み入った。
完全に道が開かないうちに入るのは、かなり危険な行為だ。
道を踏み外すと、空間の狭間に囚われてしまうのだ。
迷っても自力で次元を超えるから、問題は無いのだが。

「こんにちは。じゃない、お早うございます」
豊に声を掛けられた村人は、驚いた。
出入り口ではない所から、少年が現れたからだ。
彼が自力で渡ったため、少しずれた場所に出てきたのだ。
チャイムが鳴って迎えに行こうとしたら、窓から客が入ってきた様なものだ。

「ようこそお越し下さいました。竜神様」
村人に案内されて、豊は村長の家に来ていた。
村長が使った敬称に、少年は警戒した。
世間で通りの良い竜王や、竜神皇帝と呼ぶならまだわかる。
ただ単純に竜神と呼ぶのは、意味あいが変わる。
竜神とは、竜時間に目覚めた竜を表す言葉だからだ。

「そんなに警戒なさらないで下さい。正体を知ったのは、先読みの結果です」
彼女の言葉どおり、敵対の意思は無いと見た少年は、ようやく警戒を解いた。
未来予知ができるとすると、獣人の娘がさらわれたのも、偶然ではないかもしれない。

「それで、どんな用件ですか?」
「村の者を救っていただいたお礼に、私達を自由にしてくださいな」
豊は、ため息をついた。
村に足を踏み入れたときから、なんとなく予感はしていたのだ。
出会った村人全員が、女だったから。

女しかいないのは、目の前の女狐が企んだ事なのだろう。
村長は、女性のウェア・フォックス、狐人間、妖狐とも呼ばれる、人狐種だ。
彼女は、稲穂色の金髪に狐耳と6本の尻尾を持つ、巫女服姿のお稲荷さんだった。
ファンタジー世界で和風なのは、あれだ。他の世界から迷い込んだのだろう。

妖狐は、筋力馬鹿の多い獣人の中で、妖術を使いこなす知性派だ。
村長を務めているのも、便利なスキルが有るからだろう。
妖狐は、年を取ると尻尾が増える。
彼女は6本だから、少なくとも六百歳以上なのは確実だ。
それだけ経験のある狐なら、そこらの竜なら撃退できる。
村の女がさらわれた時も、本気を出せば阻止できたはずだ。

「女には不自由してないから、断ります」
偏屈な所のある少年は、女を抱く機会だというのに、きびすを返した。
あからさまな工作に、不快感を感じたのだ。
正直に言って、胡散臭すぎるのだ。
集落に男がいないのも、女狐がなにか仕組んだのだろう。
女の奪還を理由に、竜退治に男を送り出すとか、そんな理由で。

「その疑り深さを、山羊頭の魔神にもお向け下さい」
「それは、どういう事?」
「竜神様は疑っていませんが、あれは良くない者です」
豊は、妖狐の言葉に考え込んだ。
冷静に考えれば、確かに山羊の村もこの村に状況が類似している。
何か裏があるかもしれない。
相手は魔神。いや、悪魔なのだ。
疑わずに不意を突かれるより、不躾でも疑うべきだろう。

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