PiPi's World 投稿小説

竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 87
 89
の最後へ

竜使いの少年 89

「また今度ね」
存分に注ぎ終えて種付け衝動を満足させた少年は、新しい愛人に口付けをしてから囁いた。
専属メイドのアリスが、濡れタオルと着替えを持って部屋に入ってくる。
彼女の内心は、穏やかではない。
本職が魔術師のメイドでは、本職の女官に叶わないと思うのだ。

「ありがとう」
少年は、アリスが体を拭くのに任せた。アリスに従って来た数名の女官が、召し換えの準備をする。
側仕え全員が、尼僧院に行った訳では無さそうだ。
バランの被害を免れた者で、残留を希望した者も居るらしい。

残った全員が、敬虔なミューゼ信徒だ。
恐怖と暴力が蔓延する宮廷内で、女性の守護と復讐を司るミューゼが信仰されるのは当然だろう。
そこに代言者自らが現れ、竜退治をし、癒しの奇跡を見せたのだ。全員が豊に心酔していた。
仮に少年が自爆テロを命じたら、喜んで遂行するだろう。

少年は戴冠式の準備を終え、予定より少し遅れて玉座の間に姿を現した。
列席者の間に、戦慄が走った。恐るべき事に、地下帝国の皇帝が現れたからだ。
「ファブニルの再来」という言葉が、彼らの脳裏に浮かんだ。

竜時間に目覚めた牡竜は、抑圧された千年間の鬱憤を晴らすために、好き勝手に暴れ始める。
彼らは例外なく地下帝国を乗っ取り、竜王国を奪い取る。
そして、世界征服の挙句に放蕩三昧を味わって、全てに飽きたら竜の神器の力を解放して、どこかへ旅立つのだ。
最後の執行者であるファブニルは、二千年前の竜神だが、それ以前にも何度か竜神は現れている。
そして、いずれの竜神も、恐怖の代名詞として神格化されているのだ。

豊が竜王国と地下帝国の皇帝となったのであれば、ただ事ではない。
竜神伝説の悪夢が、開幕するかも知れないのだ。
目の前の少年は、本当に反救世主ではあるまいかと、全員が畏怖した。

「森猿も、ドワーフみたいに屈する準備をしておく方がいいよ?」
「くっ!」
顔を真っ赤にしたエルフ王弟が、屈辱と恐怖に震えていた。
先日の竜神皇帝戴冠式での暴言の意趣返し以外にも、挑発の意味も込めてある。
人間世界全てを敵にするより、エルフを相手にする方が楽なのだ。
失格外交官の王弟エルフは、靴音も荒く王座の間から出て行った。
一週間もすれば、国境の森にエルフの全軍が現れるだろう。

「竜王国の王に即位した記念に、少し愉快な話題を提供したいと思います」
豊がそう言うと、ドワーフの侍従長と教団の金庫番のヘレンが現れた。
意外な組み合わせに、不審を抱いた室内がざわめく。

「地下帝国の交易は、今後10年は教団が管理します。これは、竜王国だけでなく大陸全土の話です」
声明文と計画の概要を記した紙が、配布された。
内容を理解して顔を真っ赤にして怒るもの、真っ青になる者など反応は様々だ。
ほとんどの者が、商人と深く結びついているのだ。少年の宣告は、彼らにとって財産没収に等しい。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す