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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 79

列車の中で、内政や外交に関するレポートに目を通す。
内政は、ガタガタの状態だった。税が重すぎて、住民が逃亡しているのだ。
御用商人も最悪だ。物資調達の費用が高く、着服は明白だ。
少年は、商人の名前をみて理由を悟った。搾乳ギルドのトップなのだ。
女を宛がって懐柔したバランと結託して、よからぬ事を企てたのは間違いない。

バランの在位期間が竜王に珍しく長いのも、理解ができる。
金蔓として、ギルドにうまく利用されていたのだろう。
種付け士の新血統より、バラン在位のほうが儲かるから殺されなかったのだ。

外交状況も最悪だった。
難民の大量流出の影響で、近隣諸国の竜王国に対する印象がかなり悪化しているのだ。
それどころか、竜王は自ら軍事侵攻に乗り出すことを仄めかして、多額の経済援助を獲得していた。
実用化が疑われる核兵器で、経済援助を求める某独裁国家と同じ事をしているのだ。
更には、宮殿のハーレムに入れるために、組織的な拉致をした疑惑まで存在する。
実績も印象も最悪で、どうしようもない状態だ。

しかも、国軍の整備状況は史上最悪の水準まで悪化していた。
御用商人に食い物にされ、国王の浪費もあって国軍に予算が回らないのだ。
国内の盗賊の摘発すらままならない、末期的な状況だ。
これで国が潰れなかったのは、竜王と言う重石があったからだろう。

「これは、確実に戦争がおきるね」
「どうにもなりませんね」
まさしく、どうにもならない状況だった。
現状維持などと、悠長なことは言っていられない状態だ。
豊自身が最終兵器として動けば、確実にバランより上の働きを示すだろう。
しかし、他国の人間はその事実を知らないし、信じようとしない。
単なるハッタリとして笑い飛ばすだけだ。
実際に、その時を迎えた場合の惨劇を考えると、気が重くなる。

「ドワーフを借りるか」
「エルフが黙っていませんよ」
ドワーフの軍事力があれば、普通の国は二の足を踏む。
しかし、エルフのドワーフに対する敵愾心は根強いので、逆効果になる恐れがある。
宝石やミスリルなどの魔法金属と、各種工芸品を作る技に、嫉妬しているのだ。

魔法の品を作るには、ドワーフの宝石や魔法金属が必要になるし、エルフの工芸品は繊細すぎて実用に耐えない。
叶う事ならドワーフを奴隷としてこき使い、宝石や金属を入手したいと願っているのだ。
そして、卑しい蟻人間さえ居なければ、エルフこそが至高の芸術をもたらす種族になると考えているのだ。
この世界のエルフは、トールキン先生のそれとは違う。
とても自己中心的で、俗っぽい性格なのだ。

「僕は皇帝でもあるし竜使いだから、その時点で敵視されるよ」
「そのとおりですね」
エルフは、ドワーフ以上に竜を嫌う。
自分達より強く、賢く、長生きな種族の存在を許せないのだ。

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