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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 55

宗教には悪魔とそれを少し上回る御使いをペアで用意して、信仰心を集めるマッチポンプ型の布教形態が多く見られる。
神を信じなければ、救われないと脅すわけだ。
至高神や正義を名乗る宗教はその傾向が強いため、眉に唾をつけて接するくらいでちょうど良い。

それはさておき、豊少年である。
少年は竜変化をしていた。
精神汚染への抵抗力を高めるためと、竜になって呪いの焦点をずらすのが目的だ。
「人間の少年」が神の力を得たという噂が作った影は、「竜に化身した少年」との親和性が低いのだ。
崖っぷちギリギリで耐えてはいるが、暗黒面に堕ちるのは時間の問題だと思われた。

宗教改革に対する反応は竜の予想通りだったが、反発が豊に向かったのは想定外だった。
事前の打ち合わせでは少年が代弁者になる事は考えられていなかったので、このような事態は起きなかった筈なのだ。
神代理を、ミューゼと同格の存在である他の竜が担当していれば、話はこじれなかった。
完全に、ミューゼの独断が全ての原因だ。

そもそも、不用意に人間を飼いならして神に祭られたのは、ミューゼの不注意だ。
中途半端に放置して、影を育てたのも彼女の責任だ。
本来なら、尻拭いは自分ですべき範疇の問題だった。

起こってしまった事は、取り返しがつかない。
今更、豊が代弁者ではないと発表しても事態は改善しない。
女神の影の力でようやく反救世主の影と均衡を保っているのだ。
代弁者の力を取り上げるのは、命取りとなってしまう。

刻々と少年の容態は悪化していたが、それを改善する事態が起きた。
とある尼僧院が襲撃を受けて、女神に救いを求めたのを豊が感知したのだ。

襲撃者達は、ミューゼ教団が「原点回帰」を目指す宗教改革で動揺した隙を突き、半竜の尼の誘拐を企てたのだ。
豊を受け入れている信徒であれば、憑依戦闘ができたのだが、彼への恐怖がそれを阻んだ。
少年はゲートで移動し、敵を殲滅した。
残存する敵を探っていた彼は、少し離れた場所の荷馬車に囚われた数人の女性を発見した。

彼女らは殺され、全焼した尼僧院で焼死体として見つかる予定だったのだ。
半竜の尼達の誘拐を隠蔽するための策略だ。
大陸全土で同時多発的に同様の事件が発生したが、全て阻止された。

同時多発襲撃は、かなり大きな組織の犯行であることは明確だった。
誰もがその組織の正体を確信するが、明確な証拠は存在しない。
十数件の事件で救われた合計四百人以上の女性の証言により、新しい噂が流れ始めた。

代弁者は反救世主ではなく、正真正銘・本物のヒーローであると。
皮肉にも、神様代理は教団の敵のお陰で名誉挽回の機会を獲得できたのだ。
噂が流れるにつれて、一般女性の救いを求める願いが豊に届くようになった。
影の魔力のお陰で、乙女の願いを感じ取る神通力が身に付いたのだ。

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