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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 54

同時に開けるゲートは二つ。あと一つエメラルドの魔宝石があれば三組使えて効率が良いのだが、無い物ねだりはできない。

テーブルの上に大地図を広げ、伝令を送った施設に虫ピンを刺して印を付けていく。
帰還したら別の色を刺しなおす。数百本の虫ピンは慌てて買ってきたものだ。
まるで、戦争時の大本営内の総司令部のような光景だ。

伝令から書簡を受け取った者達の反応は、予想そのままだった。
豊を反救世主(アンチメシア)認定したのだ。
穏当な反応の神殿でも緘口令を敷いて動揺を抑えるだけで、受け入れとは程遠い。

うっかり豊を弁護してしまった伝令は、半狂乱の信徒から私刑を加えられた。
運が良いものは、反省房送りで済んでいたが、直接的な暴力に晒されてしまったものも居る。
直接、豊が出向いても火に油を注ぐ結果となるので、遠隔から対応をしなければいけない。

神と眷属の絆を使って、豊は危害を加えられている信徒に憑依した。
格闘技を使って、押えつける者の拘束から抜け出す。
ゲートで離脱できる場合は、そのまま逃亡した。

戦闘になった場合は、目撃者を震撼とさせる光景が繰り広げられる。
瞬時に武器を持った複数の神殿護衛が無力化され、地に這ったのだ。
それをしたのは、一瞬前まで非力に見えた女性信者なのだ。
女信者は治癒の奇跡で倒れた者を癒すと、悠々とゲートで帰還してゆく。

反省房送りになった場合は簡単だ。
単純に、人目を盗んで帰還用のゲートを開くだけで済むからだ。
ゲートを阻む魔術結界が有ったとしても、神の意思の前に無効化できた。

夕方になる頃には、書簡の配布はほぼ完了していた。
だが、代弁者に関する黒い噂は、広まる一方だ。

曰く、神の力を騙し取った少年が代弁者を名乗っている。
人を支配する妖力を持ち、操られた人間は計り知れぬ戦闘力を持つ。
女を魅了する魔力で教母は貞操を奪われ、強制妊娠出産させられた。
少年は空間を操る妖力をもち、魔術結界を乗り越えて空間をつなぐ。
などなど、虚実入り混じった噂だ。
本当の部分がかなり多いので、否定がしにくい。

これらの負の想念は、女神の影とは別の影を形成して、豊を蝕んでいた。
女神を凌駕する、反救世主(アンチメシア)として少年が定義されつつあったのだ。
ミルク売り女性のネットワークのお陰で、ベリスだけが噂から免れていた。
それ以外は、全て少年に敵対する噂で蔓延した。
既に、反救世主の影がもたらす魔力塊は、ミューゼから受け継いだそれを超える力となっている。

力のある悪魔が、魔王や大魔王を名乗って人間の脅威となろうとする理由がここにある。
少し怖がらせるだけで、簡単に人間の負の信仰心を集められるからだ。

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