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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 52

「あとは信仰の力ですけど、僕が預かった力は、責任を持って還元するつもりです」
少年はコップの水を飲んで息を整えた。
還元の方法は思いついていないが、成り行き任せ出行けば何とかなると楽観している。

「ただし、女神は本来、人間の自助努力に期待しています。安易な神頼みは控えてください。教団は女性専用ギルドみたいなものです。互助が基本です。神は初代ギルドマスターだと思ってください」
奇想天外だが、女神の本質を捉えた例えに、何人かが納得がいったと言う顔で頷いた。
神を初代ギルドマスターと考えるなら、確かに引退後まで何でも神頼みするのは間違いだろう。
沈黙の女神などと呼ばれる引き篭もりがちな態度も、人に対する君臨を望まぬ神の意思と理解すれば不思議ではない。

「今朝の神の啓示については、全て本当の事であると答えてください。本当に本当の事ですから」
実は嘘でしたと言えれば気が楽だけどねと、少年は内心で考える。
数万人規模の宗教団体の教祖、いや、神様に祭り上げられるなど責任が重過ぎて胃に穴が開きそうだ。
後は、何があったかなと、少年は思案する。

「あ、神がどのような姿で降臨したとか、その辺の質問には絶対に答えないでください。事情があって秘密にすべき事ですから」
経産竜の時間の秘密を守るのが最優先だ。
最悪、秘密の為ならミューゼの人格が消去される事態も容認することが、経産竜の間で決まっている。

「あとはハグレ竜の情報があったら、教えてください。僕が退治に行きます。教団と関係の無い私用で申し訳ないんですけど」
少年は、ぺこりと頭を下げた。
さらりと竜退治をすると言ってのける発言に、周囲がざわめく。
ハグレだろうが、集落のハーレム持ちだろうが、竜は腐っても竜であり簡単に退治できるものでは無い。
少なくとも、野良犬の駆除感覚で実行する事ではない。

「後は、『星界より訪れし魔』と呼ばれる魔物の情報を。隕石から沸いた化け物です。危険なので、わざわざ調べないでください。噂を教えてくれるだけで結構です」
全て言い終わると、水を飲み干した。
仮想空間での経験は、基本的に一対一だったので、こういった聴衆相手に話すのは慣れていないのだ。
人生経験を積んでいない事柄では、15歳相応の肝っ玉しか存在しない。

「単純な興味なんですけど、質問してよろしいですか?」
「どうぞ」
「なぜ、竜退治をなさるんですか?魔物を調べる理由は?」
牛乳売りのお姉さんの一人が、おずおずと質問した。
どこか見覚えがあると思ったら、朝市で牛乳を売ってくれた人だ。

「ああ、それは、僕個人の使命なんですよ。ハグレ竜を退治して、竜の神器と呼ばれる秘宝を集めて、魔物を何とかしなきゃ駄目なんです」
なんともスケールの大きな話に、信徒達がざわめいた。
見かけでは判らないが、正真正銘の勇者ではないか。
神の代理に選ばれるだけはある。

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