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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 46

「困ります、そんな力貰っても仕方ないし、受ける資格もない」
「その無欲さこそが資格となります。元より神の力を授かりし貴方だからこそ、託すのです。強き力を持つものなら、力に惑わず正しく使えましょうから」
問答無用で、ミューゼは信仰の影が産んだ魔力塊を呼び出し、豊に流し込んだ。
これは、勇者や聖者などに神の力を与えて、神の代行とする魔術儀式だ。
普通は限定的なもので、ここまで完全な権力委託は珍しい。
実質的な神の座の委譲だ。

影をミューゼ本人が取り込むのは危険なので、代理の行使者が必要なのは確かだ。
信仰内容を矯正してから、力を返却する必要があるのだ。
豊は、その役はアンドレアあたりに頼むのだと思っていた。

「竜の神器が集まって、神威執行するときの予行演習だと思って、頑張りなさい」
「そこまで言うなら…。確かに、そうかも知れませんね」
詭弁だと思うが、一応は妥当な理屈なので豊は呑む事にした。
同意した瞬間に、1万人以上の信徒と目に見えない絆ができたのを感じた。
目の前の女達もその気配を感じたらしく、驚いた表情だ。

「さぁ、就任の挨拶をなさい」
「あ、はぁ。ええと、この度、竜神ミューゼ様の代弁者に任命された、遠藤豊といいます。神様代行なんて恐れ多い事ですけど、任されたからには頑張ります」
「教義からずれた信仰が蔓延しているから、代言者を任命しました。彼の言葉は私の言葉。ちゃんと従ってあげなさい」
万を超える信者が、突然の信託に驚いた。
沈黙の女神とも言われる不干渉主義の存在が、全信者にお告げをしたのは初めてだろう。
しかも、よりによって、男に全権委任すると言うのだ。それも、頼りなさそうな男の子の声だ。

それにしても、豊の挨拶はつたない。まるで小・中学生の生徒会長就任演説だ。
それでも、目の前の信者は拍手で迎えてくれた。
飾らない率直さに、好感を抱いたのだろう。

「まずは、今後の行動方針をババーンと決めちゃいなさい」
「それは神様である貴方の仕事だと思います」
「そうね〜まずは、独身女性信者は全員、豊の妻になりなさい」
驚天動地の宣言である。
純血と貞節の女神の発言とは思えない。

「ちょ、待ってください!何でそうなるんですか!?」
「元はレイプ被害者救済が教団の始まりなんだけど、一生男を知らないのは不健全なのよ」
「僕の妻じゃなくても良いじゃないですか」
「嫌なら教団を抜けていいのよ?本当は、教団が自然消滅してくれれば良いと思ってるから」
神の豹変に、信者の信仰が揺らいだ。
豊は、押し付けられた神の魔力が減少したのを感じて、そう言う事かと納得した。
もともと、ミューゼは人間との関わり合いを絶とうとしていたのだ。
不干渉主義は失敗して、影を生み出す結果となったが。

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