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竜使いの少年
官能リレー小説 - ファンタジー系

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竜使いの少年 39

(自称ミューゼ信者の、神聖魔法の使い手が居ます)
(本当なら一大事。嘘ならお仕置きが必要ね。いいわ、本人に確認を取っておいてあげる)
(瞑想修行のときにでもまた)
少年は目を閉じて精神感応で問い合わせをした。
精神感応は、竜の持つ基礎的な特殊能力の一つだ。
『エクスタシー』などの魔法は、この能力を悪用したもので竜なら簡単に使える。
経産竜などの加速時間が使える者でないと、単なる会話程度にしか使えない。

「失礼ですが、疑わしいですね。限りなく黒に近いグレーです」
単刀直入に、少年は言った。
本人確認ではないが、こんな重要な話題を剣の村で一番歳を取った事情通、剣の影長老アンドレアが知らない筈がない。

「私の信仰をお疑いですか?」
「よろしければ、確かめさせていただきたいです」
「挑戦を受けましょう」
自信たっぷりに女性が言い切った。
豊は肉きりナイフで左手首を切り裂いた。
自称神官が手をかざして祈ると、確かに傷が癒えてゆく。

「祈願系の魔術ですね。力の源は、私の知るいずれの神でも無いようです」
様子を見ていたアリスが言った。
この世界の神について豊が知らないだろうと、気を利かせてくれたようだ。

「有難う。本当に奇跡を行使できるんですね。疑ってごめんなさい」
少年はさっと手を一振りして、こぼれた血を跡形もなく燃やしてから謝罪した。
神官の力の源については、あえて追求しない。
異端審問になりかねないので、信者でない豊が指摘するのは非常にまずいのだ。

場の雰囲気をなだめるため、豊はリュートを手に歌い始めた。

昔々とある所にすんでいた竜が、娘をさらって孕ませた。
悪い竜は、噂を聞きつけた冒険者集団に退治され、娘は救われたかと思われた。
しかし、冒険者は娘を戦利品とみなして慰み者にした。
そこにミューゼが現れ、冒険者を一掃してしまう。
搾乳奴隷として売られていた半竜の娘達も救い出し、冒険者から取り上げた財宝で尼僧院を作ったという。

そんな内容の歌である。
実のところ悪い竜はミューゼの息子で、腹の中の孫を助けるために戦ったというのが真相である。
最初から息子を教育しろとか言いたくなるが、竜はそんな事はしない生き物だ。
牡が牝を捕まえて巣を作るのは、当然の権利。
その代わり、厳しい縄張り争いに勝利する必要があるのだ。
冒険者に狩られるのも、弱いのが悪い。誰も同情しない。

豊が歌ったミューズ教設立の歌に、信者は感銘を受けたようだ。
他にリクエストに答えて曲を弾いているうちに、食堂の営業時刻が終わり、エリルたちは巡礼者に案内されて部屋へ上がっていった。
私服に着替えたウェイトレスに連れられて、少年は店の裏口から外に出た。

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