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賢者ルシャード
官能リレー小説 - ファンタジー系

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賢者ルシャード 10

シルヴィアは自分が意識のない間にルシャードに何をしたのかを精霊に夢で視せらされていた。
「あの魔導書はどこに?」
「あっ、フェイランさんに渡したままだ」
シルヴィアは嫌な予感がした。
催眠でフェイランの姿をしたバケモノが何かやらかすのではないか。
「あのバケモノ、魔法を使えたわよね」
「でも、魔導書は使えないんじゃないかな?」
「心配してもしかたないわね」
こうして姉は職務を放棄して、ルシャードの旅に同行することになったのだった。
「ふふ、また会いましょうね、ぼうや」
夢の世界はすべての夢につながっていた。
逃げ去る寸前の精霊の声が、ルシャードの心に刻まれている。




フェイランの悲鳴を聞いて触手の群れが彼女をとらえるのを闇の中にルシャードは視た。
どうすることもできずに自分たちの体に、剣と指輪の力で引き上げられていった。
姉は泣きじゃくっていたので気がつかなかったのかもしれない。
ルシャードが戻らないので、フェイランは姉の夢に同調を試みたのだろう。
そこで、フェイランの中にあれは逃げた。
催眠で同調しやすい状態なら、あれは人の夢から夢を渡りながら逃亡していく。
そして、宿主の肉体を変化させるほど力を得たら、召喚者のルシャードの前に姿を現すだろう。
それまでに夢の中でみたモンスターと戦うための準備が必要だ。

師範役のシルヴィアが長期休暇することを報告する手紙が騎士団本部で受理されたのと同じ頃、フェイランに対して、称号の剥奪をもって処罰とすることを神聖教団は決定した。
守護の指輪をつけた少年と破邪の大剣を装備している戦乙女は、その頃には故郷の商業都市を離れて旅を続けている。
この時、シルヴィアが処罰されなかった理由がある。
騎士団ではあるコロシアム形式の大会の出場者を募っていた。
そのコロシアムに参加することを条件にシルヴィアは長期休暇を申し入れたのだ。
ビショップの一人が失踪したのを教団は放置したわけではない。
内密に各地の聖職者たちへフェイランの目撃情報の提供を求める通達を回していた。
何らかの事件による失踪の可能性も教団は考慮したのである。



「親方とはぐれてしまうし、荷物も重いし……。
はぁ、どうしよう。
やってられないわ。まったく」
商人の見習い弟子の若い女性が沈みゆく夕日にため息をついて、街道の道端で座り込んでいた。
商売に夢中になり、商隊の馬車に置いていかれた。安くで仕入れて高くで売る。
これが商売の基本で、ある村で薬草採取を手伝いを一日中手伝い安くで分けてもらった。
村人が感謝して一泊していったらいいと言ってくれ、好意に甘えさせてもらった。
薬草をかついで村を出たときには、待ち合わせ場所に馬車はなく、しかたなく歩いている。
途中で追いつく予定だったのだが、はぐれてしまったのである。

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