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賢者ルシャード
官能リレー小説 - ファンタジー系

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賢者ルシャード 11

歩き疲れたので馬車でも通らないかと街道の道端で腰をおろしている。
女商人エミルの前を、失踪中のビショップは通りすぎて行こうとした。
「ねえ、ちょっと待って。安くしておくから薬草を買わない?」
フェイランが振り返ると笑顔のエミルが立ち上がり、手招きしていた。
どんなに疲れていても、売れそうだと思えば笑顔でがんばる女商人である。
「ちょうどいいタイミングね」
フェイランが静かな口調でエミルに言った。
「どのくらい必要ですか?」
エミルは荷物をほどいて薬草を取り出した。
「全部」
「えっ?」
エミルの笑顔がこわばる。
買う気はなくて、からかわれたと思ったのだ。
「下僕にしてあげるから感謝しなさい」
フェイランが何を言っているか、エミルには意味がわからなかった。
夕日が沈み、無数の星が夜空輝く頃にはエミルはすっかり骨抜きにされていた。


「まだ力不足ね。
シャーマンたちの隠れ里を目指しなさい。
そこで、また会いましょう」
街道で倒れている旅商人エミルの頬を艶やかな笑みを浮かべたフェイランが撫でた。
シャーマンたちの隠れ里……。
夜明け前になりエミルはようやく身を起こした。
フェイランの姿をさがした。
すでに立ち去っている。
エミルは悲しみに似たさみしさに泣き出しそうになりながら、シャーマンたちの隠れ里を目指すためにゆっくりと歩き出した。
フェイランの意識から情報を得た精霊は何かを企んでいるらしい。
そのために、旅商人エミルを使って何をするつもりなのか――。
同日の夜、旅商人エミルがフェイランに好き放題にされていた頃、姉妹は騎士団の野営地にいた。
「さすがシルヴィア様だ」
「それに弟君もすごい活躍だったな」
兵士たちが食事をしながら話している。
「協力していただき感謝いたします」
指揮官の天幕でルシャードとシルヴィアは丁寧に礼を言われていた。
見たことのない敵に苦戦していた騎士団の兵士たちが全滅も覚悟した。
そこにルシャードとシルヴィアが通りかかった。
破邪の大剣と守護の指輪の力によって敵がバラバラと壊れて動かなくなった。
武装した骸骨の兵士スケルトン。
「賊の討伐の任務で来てみたら、完全に破壊しなければ戦い続ける骸骨だったわけですね」
「そうなんです」
ルシャードに近づいた敵は守護の指輪の淡い光に包まれた彼に触れることもできない。
シルヴィアの手にした大剣が触れると敵はあっけなく崩れ落ちた。


森に村人や旅人を襲う賊が出るので討伐依頼を受けて騎士団から派遣された兵士たちは、スケルトンの出現に目を疑った。
かなりの苦戦の末に指揮官は全滅も覚悟したとき、ルシャードとシルヴィアが加勢した。
部隊の生存者は森から脱出した。
スケルトンは森の外までは追ってこなかった。
「森に結界を張りめぐらせて、その中だけで呪術で人骨を操っているんだと思います」
ルシャードが騎士団の討伐隊指揮官に説明した。指揮官のクロードがそれを黙って聞いていた。
「ネクロマンサーが森にいるんだ」
「ネクロマンサー?」
「呪術師だよ、姉さん。
神官だけが法術を使えるわけじゃない。
ただ禁忌の呪術を使うから、神聖教団に報告すれば協力してくれるんじゃないかな」
「騎士団としては教団と協力するのはあまり望ましくないと幹部の連中は判断したんでしょうね。
だから、敵は賊ということにして討伐隊を派遣したのよ。
なんとかなるものじゃないのに……」
「ああ、どうしたらいいんだ。
我々の部隊は、全滅するところでした」
「ルシャード、どうにかならない?」
「なるよ。でも、いいのかな?」

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