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賢者ルシャード
官能リレー小説 - ファンタジー系

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賢者ルシャード 3

騎士団が身分階級にこだわるのは、王国の体制にも関係がある。
国王やその代行権限を与えられた宰相。
王や宰相の助言、補佐を役目とする大神官。
領地は持たないが地位としては大神官と同格の地位である大将軍。
領主を含む官僚はその下の地位である。
騎士団のトップは大将軍で軍事関連の権限を与えられている。大神官は内政関連の権限を握っている。どちらも王族の血縁または外戚である。
宰相は王が病などで政治を直接行えない場合などに置かれる役職であり、基本的には空席である。
そうした体制の中で教団や騎士団が、男女問わず平民であっても官職として就任して活躍できるものとして人材を受け入れていても、大神官や神官、大将軍や将軍に抜擢されることはない。
それを百騎隊長の地位まで出世したシルヴィアは理解していた。
千騎隊長や万騎隊長の地位までは昇進できるかもしれないが、それ以上の地位は望めない。

ルシャードも商人とならない限りは、いつかこうした身分階級の壁を意識する日もくるだろうと、姉は思うのだった。
まだ十五歳。
可能性も時間もある。
それが姉シルヴィアは少し羨ましかった。
「どうしたの、少し酔った?」
ルシャードに言われて、笑顔にもどる。
「そうね、ちょっと飲みすぎちゃったかも。
ルシャードも少し飲んでみたくない?
ここのお酒はおいしいよ。
十五歳の頃は、なんか大人のやることをしてみたかったりするでしょ?」
「別にお酒を飲んでみたくはないな」
「そう?」
シルヴィアは親の秘蔵の高級酒を飲んで、部屋で浮かれて歌を歌い踊っているところを見つかり、両親にあきれられたのは十五歳の頃である。
「ルシャードはまじめでいい子だもんね」
「まあね」

ルシャードは酔ったといってシャツの胸元のボタンを少し外した姉の胸元のほうが、酒よりも気になっているのだった。
シャツの下にある豊満な乳房を含めて地味な服装でも美しい体つきをしている。
騎士として体を鍛えているせいだろうか、無駄な脂肪の弛みはない。
「帰ろうか、姉さん。もっと飲みたい?」
「お腹もいっぱいだし、ねぇ、小さい頃みたいに手をつないで帰ろうよ」
シルヴィアは酔ったふりをしてルシャードと手をつないだり、抱きつくのが好きだ。
この日の夜は、催眠の魔法で姉の恋心を知ってしまったので、ルシャードはそれが悪ふざけではなく、好きでたまらないから我慢できずにかまってくるのだと気づいている。
あと騎士の職務でストレスもあるにちがいなく、恋人のいない姉にとって甘えられるのはルシャードぐらいなのかもしれない。




勇猛果敢な美しき戦乙女と呼ばれている姉が、酔ったふりをしないと照れくさくてじゃれつけない、というのも、かわいらしい気がした。
最近は、姉にじゃれつかれると人目も気になり、敬遠ぎみだった。
手をつないで店からしばらく歩いて帰宅した。
途中で夜空を見上げてシルヴィアがぽつりと小声でひとりごとのようにつぶやいた。
「ずっと一生、一緒に手をつないで月とか星をみれたらいいな……」
ルシャードは聞こえなかったふりをして、ただ黙って歩いていた。
きれいな満月だった。

「おやすみ、ルシャード」
「おやすみ」
帰宅すると、二人とも自分たちの部屋に戻った。
ルシャードはベットに仰向けに寝そべって目を閉じてみるが、落ち着かない。
姉シルヴィアの手の感触がまだ自分の手に残っている気がする。
家族としてしか思っていなかった姉を異性として意識してしまっている。
シルヴィアは弟が今日は嫌がらずに手をつないて歩いてくれたので、ベットで寝そべり、自分の手を見ながら微笑していた。
弟のことが好きすぎて、本当は恋人たちのようにキスしたり抱き合ったりしたい。
でも、それで嫌われるぐらいなら我慢する。

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