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勇者のお供はボテ腹妊婦達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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勇者のお供はボテ腹妊婦達 8

「じゃあまずどっかでメシでも食いながら、これからのことでも話そうぜ!
 いくら俺が凄腕の戦士様でも、おまえらの実力も知らないで戦えるほど自信があるわけじゃないしな」
そう言ってさっそく食事をたかろうとするシャルネ。
さりげなく高くてうまい飯屋に行こうとしているあたり、とても凄腕の戦士様の行動とは思えない。
まだ幼かった俺はそれに気づかず、流れるままについていこうとしたのだが・・・あいにくフィオナ姉はそう簡単に騙されなかった。
シャルネについていこうとした俺の手を握ってそれを阻止すると、トゲだらけの言葉で彼女も引き止める。
「ごめんなさい、シャルネさん?
 お恥ずかしい話なんだけど、私たちあんまりお金に余裕がないの。
 宿屋さんのお台所を借りて私が何か作りますから、宿屋のほうに来ていただけます?」
「ん?そっか、そりゃ悪かったな。んじゃ案内よろしく頼まぁ」
フィオナ姉の言葉をそよ風のようにやり過ごしたシャルネはそう言うとあっさり踵を返した。
だがその裏では2人とも見えない火花を飛び散らせながらお互いに警戒を強めていた。
(チッ・・・!せっかく豪勢なメシにありつこうと思ったのに・・・。
 この姉ちゃん、思ったより油断ならねえな・・・)
(やっぱり油断ならないわね、この人・・・。
 私とリュートの間に割り込んでくる図々しさと言い、ナチュラルにごはんをおごらせようとするごうつくさと言い・・・。
 私のリュートをカモにされてたまるもんですか。
 リュートは何が何でも私が守り抜いて見せるわ・・・!)
見た目は穏やかに、しかし実際は火花飛び散る危険な空気漂う中、俺たちは宿屋でささやかながら新しい仲間の歓迎会を開いた。
と言ってもやっていたのはお互い自己紹介して、たわいもない話をしていたくらいだったけど。
「ふ〜ん、2人ともガチの戦闘経験どころかケンカの経験もなし。
 正真正銘、レベル1の初心者・・・か。こう言っちゃなんだけど、そんなんでよく旅に出ようとか思ったもんだね」
リュートたちから大体の話を聞いたシャルネは、肉の一片もなくなった骨を加えながら2人をそう評価した。
仲間になったばかりの人間への言葉とは思えない厳しい言葉。
しかしリュートにはぐうの音も出ない。
親たちがポコポコ子供を作るから、年頃を迎えた子供はすぐに独り立ちしなければならないのは仕方がない。
問題なのはその準備のお粗末さだ。
いずれ旅に出るとわかっているのならば、それなりの準備がいる。
それは薬とかお金とか、即物的なものだけではない。
我が身を守るための自衛の手段。すなわち『理不尽なモノと戦う力』だ。
これがなければ何をどれだけ準備していようがお話にならない。
魔物や盗賊、詐欺師やチンピラにカモられ、搾取されておしまいだ。
事実、リュートたちは資金繰りに困り、旅費を稼ぐことにも困っていた。
まぁそういう意味ではシャルネも人のことを言えないのだが。
だからこそ図星を指され、言葉に詰まるリュートに対し、姉のフィオナは烈火のごとく怒った。
「よっ・・・よけいなお世話です!あなただって私たちと同じようにお金に困っていたくせに!」
「そりゃそうだけどさ。オレはいざとなったらどんなことだってするつもりだったぜ?
 身体を売るなり、盗賊まがいするつもりだって、さ。
 でもアンタら、仕事選んでたよな?そんな余裕なかったのにさ。
 ホントたかったのがオレでよかったよ。他のヤツらだったら何要求されてたかわかんねえぞ?」
自分が変なことをしないのは、たまたまだ。
もうちょっと危機感を持て。早死にするなり大事なモノをなくしたいならそれでもいいけど。
言外にそう言われ、とうとうフィオナも反撃の糸口を失った。
何もかも、彼女の言うとおりだ。
世間では魔王復活のうわさが飛び交っているのに、あまりにも無防備だった。
これから世界はもっと荒れる可能性が高い。
治安が悪くなれば町や村だって安全とは言えなくなる。
その時自分たちは何もできないことを理由に黙って被害者になればいいのか。
冗談ではない。悪党になるつもりもないが、弱者に甘んじるつもりもない。
だからこそ、沈黙を保っていたリュートは意を決し、シャルネに『あるお願い』をした。
それはフィオナにとって、死刑宣告にも等しいとんでもないお願い。
「・・・シャルネさん!お願いです!どうかオレに剣を教えていただけませんか!?
 オレ、姉ちゃんを失いたくないんです!」
「りゅ、リュート!?あなた、何バカなことを言ってるの!?」
「姉ちゃんは黙ってて!オレ、いざって時に何もできないで姉ちゃんを見殺しにしたくないんだ!
 姉ちゃんを守りたいんだよ!!」
「・・・っ!」
好きな女を守りたい。実際にそう言ったわけではないが、フィオナにはそう聞こえた。
リュートが大好きな彼女にとってそれは何よりもうれしい殺し文句。
でもそれを許せばリュートが危険な目に遭うようになるわけで。
だからと言ってたくましくなったリュートというのも捨てがたくて。
板挟みになったフィオナはもうどうしていいのかわからない。

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