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魔王と勇者の逆転物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔王と勇者の逆転物語 2

「・・・此処どこ?」
開口一番。彼こと松本清二(まつもとせいじ)の言葉は、白で統一された神殿らしき豪華な建物内に情けなく響き渡る。
「よし、少し落ち着け俺。 今日の事を思いだすんだ。 朝起きて、飯食って、着替えて学校行って、授業やって部活やって・・・その後は・・・アレ?」
一人、神殿の真ん中で突っ立っている彼は冷静を保とうと、今日の事を順々に思い出していこうとした。
しかし、その後は一向に思い出せず首をかしげようとした瞬間。
「その後、お前は今日発売される“ある本”を購入するため本屋に向かっていたが、途中速度違反の車に出くわし衝突して・・・死んだ」
彼の頭上から凛とした女性の声が降ってくる。驚き上を見上げると、彼の眼前数メートル先には立派な階段があり、その頂上に「ソレ」はいた。
「え、えっと・・・どなたで「お前だな? 松本清二という奴は」?!! 何で、名前を!?」
「知っているのか、か? 当たり前だ。 私はブリュンヒルデ、戦乙女長にして戦場に死を平等に分け合う存在・・・そして、お前を死なせた張本人だからだ」
カツン、カツンとゆっくりとした動きで階段を下りる彼女。
その途中、彼の疑問に真顔で答えていく様は、彼女の美貌と相まって美しくも何処か恐怖を感じずには居られない。
「は・・・俺が死んだ?」
彼女から聞かされた自分の現状に、ポカンとして立ち尽くすしかない清二。その表情は見事なまでの間抜け面である。
「そうだ。 お前は死に、その魂を私は此処まで運んできたという訳だ」
階段を下り終えると、そのままの動きで彼に近づいてくるブリュンヒルデ。
そんな彼女に、清二はピクリとも体を動かすことが出来ない。
「あ、あははっ! え? 冗談か何かですか? イヤだ「冗談ではない。 ならば、見せてやろう」は? !!?」
引きつりまくった表情で笑おうとする清二。しかし、そんな彼にブリュンヒルデは右手を向ける。
次の瞬間、彼の頭に直接その光景が流れ込んできた。
夕暮れの空、一人上機嫌に歩く自分、そして・・・・。
「うわあぁぁぁぁあ!!!!???」
彼の悲鳴が神殿内に酷く響く。
横断歩道、渡っている自分に向かって突っ込んでくる一台の車。鈍い衝突音、叩きつけられる己の体、グチャグチャになり最早“人”とすら認識できない程の“何か”。
「これで分かったか? 自分が死んだという事が・・・」
右手を彼に向けたまま厳かに言う彼女。しかし、そんな彼女の言葉は今の彼には一切届いては居なかった。

(死んだ?俺が本当に・・・嘘だ。これはなんかの悪戯だきっとそうだ。そうに違いない。そうじゃなかったら・・・)
「うぅ・・・うぁ、ぁぁ・・・」
両手で頭を抱えながら床に泣き崩れる清二。目は開ききり大粒の涙がボロボロと溢れ、表情も恐怖と絶望の二つしか映していない。
声を殺して泣き続ける彼。しかし、彼のこの反応は当たり前であり正常である。
いきなり訳の分からない場所に居て、知らない美女に自分が死んだと告げられ、あまつさえ死んぬ直前の景色を頭に直接流し込まれたのだ。
これで泣かなかったら、その人間は恐らく何処かがイカレタ化け物だろう。

清二の悲しみの泣き声は、豪華な神殿内に静かに響き渡る。

「・・・すまない」
「っ!!?」
そんな悲しみと絶望に塗れた清二の頭上に優しくも温かい声が降ってくる
柔らかくて温かな感触が、彼の後頭部を埋め尽くす。先ほどの威圧的な声から一辺、慈愛に満ちた声に変わり、ゆっくりと優しく彼の背中を撫でる手は不思議なほどに彼を癒していく。
抱きしめられたこと事でフワリと香る彼女の匂いに、不謹慎ながら彼はドキリと心ときめいてしまった。

「・・・」
「すまなかった。 お前にいきなりあんな光景を見せてしまって」
アレから数分。二人は神殿内にある部屋にいた。周りは豪華な装飾品が並べられている。
そんな中、部屋に置かれているテーブルに座っている清二と彼女。清二の頬には、今だ泣いたときの痕が残っている。
そんな彼にブリュンヒルデは紅茶を一杯、彼の目の前に置いてもう一度謝罪した。
「・・・なんで、俺を殺したんですか?」
置かれた紅茶を眺めながら、ポツリと彼は呟く。反対側に座るブリュンヒルデは、自分用の紅茶を飲もうとして出した右手を膝の上に置きなおす。
「・・・清二。 お前は“転生”と言う言葉を知っているか?」
顔を伏せたのは一瞬。次の瞬間には、真剣な眼差しと口調で彼と向き合う彼女の姿があった。

「転生? えぇっと・・・死んだ人が生き返って、第二の人生を歩むって奴ですよね」
温かい紅茶を一口飲んだ清二は、彼女の言葉に少しつっかえながらも答える。まだ生きていた時、インターネットの二次小説でその様な物を数多く見てきたのだ。
「そう、それでいい」
優雅に紅茶を一口飲むブリュンヒルデ、その様はまさに一つの絵画になるほどである。
「その・・・まぁ、この後の展開は見えてるんですけど。・・・何故、俺を?」
そんな彼女に、清二は大体の見当は付いていながらも、自分が死ななければいけない“理由”を聞く。
声は遠慮がちだが、その口調はハッキリとしていた。
「そうか、なら話は早い。 分かってると思が、私はお前を何処か別世界に転生させる。 そして、お前を殺した理由だったな・・・」
「?」
話の後半、急に声が沈み、顔を伏せる彼女に清二は首を捻る。
「理由は・・・私の親友の奪還とある世界を“救済”してほしいのさ」
「・・・はい?」
彼女の口から出た言葉に、清二は気の抜けた声を出すことしか出来なかった。

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