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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 345

セイルはとりあえずサーラの元に戻ろうとした…その時だった!
「あ…っ!!?」
…彼は道行く人々の中に“知った顔”を見つけて立ち止まった。
“その者”もセイルと目が合うと、一瞬ニヤリ…と笑って人混みの中へと消えていった…。
「ま…待てぇ…っ!!!」
セイルは急いで跡を追うが、人混みでたちまち見失ってしまった。
「うぅ…何で…何で“あの人”がここにいるんだよぉ…っ!!?」
セイルは胸が締め付けられるような思いに駆られる。
彼が見たのは“アルムルク・ライラ”であった…。
セイルの騎士学校・初等科時代の恩師…。
騎士として憧れ、尊敬していた相手…。
そして初恋の女性…。
…そして…彼の最愛の祖父、ウマルを殺した快楽殺人者であった。

(…あの人は僕を追って来たんだ…)
セイルは思い至った。
そう、彼がライラとの決闘をすっぽかして逃げたから、彼女はセイルの後を追ってイルシャ=マディーナまで来たのだ。
そして人を殺した。
(…僕のせいだ!僕があの時ちゃんと戦っていれば、あの娘は死なずに済んだんだ…!)
しかし、なぜ…?
単に殺人衝動に駆られての犯行だろうか…。
それとも…。
「まさか…!?」
セイルは嫌な予感がした。
その時、一人の男が叫びながら走ってきた。
「大変だ大変だぁ〜!!また殺しだぜ!!今度は若い男女だ!!」
「えぇっ!!?」
「何だってぇ!!?」
「本当なの!!?」
「今夜だけで二件かよ!?」
人々も驚く。
「くっ…!!」
セイルは予想が半ば確信に変わった。
ライラの目的はセイルを自分と戦わざるを得ない状況に持っていく事なのだ。
この犯行はメッセージ…すなわち“私を止めなければ人を殺し続ける”と…。
男は言う。
「いやあ現場を見て来たがホント酷えもんさ!人気の無い裏通りでよ、仲睦まじくヨロシクやってた男と女が、そのまんま一刀の元に首をバサリだ!二人の体は血の海の中で繋がったまんまだったぜ!」
「うえぇ…」
「そいつぁ羨ま…いや、痛ましい死に方だなぁ」
「羨ましいもんかアホ」
人々は話し合う。
「しかし何なんだろうな一体?今夜に限って妙に猟奇殺人ばかり起きるじゃないか」
「やはり同一犯かねぇ?」
「えぇ!?じゃあ街の中を殺人犯がウロついてるって事か!?」
「やだ!怖いわ〜!」
セイルは決意した。
(僕があの人を止めなければ…!)
だがその前にサーラにこの事を知らせねばなるまい。
彼女を王宮まで送っていく間も惜しいが、まあ人通りの多い通りを通って戻れば大丈夫だろう…とセイルは思った。

ところがセイルがサーラを待たせておいた場所まで戻ってみると、彼女の姿が無い。
「そんな…!?サーラさん、こんな時に一体どこに行ったんだ…!?」
「おい、そこの兄ちゃん。ひょっとしてクルアン・セイルさんってお人かね?」
露店を出している男が話し掛けてきた。
「はい、そうですが…」
「ああ、良かった。あんたのツレの娘さんから言付け預かってたんだ。知り合いに合ったから、ちょっと一緒に街中をブラついてくる。先に“家”に戻っててくれってさ…」
「し…知り合い…!!?」
セイルは物凄く物凄く嫌な予感がした。
「お…おじさん!その“知り合い”ってどんな人でしたか!?」
慌てて問い詰めるセイルに、露天商はニヤニヤ笑いながら言う。
「おやおや、焦ってるねぇ〜?女の子を一人で待たせておくからそういう事に…」
「良いから早く教えてくれ!!!時間が無いんだ!!!」
「な…何だよコイツ!?…安心しろよ!女だよ女!若い女だ!エラいナイスバディの美人だったな。おツレさんは“先生”って呼んでたが…」
「あぁ…」
間違い無い…ライラだ。
先回りしてサーラを連れて行かれた。
サーラは何の疑いも抱かずライラに付いて行っただろう。
サーラはライラを単に騎士学校時代の好感の持てる女教師としてしか認識しておらず、その正体が快楽殺人者だとは知らないからである。
セイルは目の前が真っ暗になりかけた…。
(…探し出さないと!!何としてでも!!)
だがすぐに思い直す。
彼は再び露天商に尋ねた。
「二人はどこに行くとか話してませんでしたか!?」
「い…いや?…そういやその“先生”って呼ばれてた女の方がおツレさんに『ちょっと私と来て欲しい』とか言ってたような…それ以上の事は何も…」
「!!…それで二人はどっちに行きました!?」
「あっち…」
「く…っ!!」
セイルは男の指差した方へ向かって全力で走り去った。
「何だいアイツ?礼も言わねえで行きやがって…ったく最近の若いヤツは躾がなってねえ…」

「…はぁっ…はぁっ…はぁっ…(どこだ!?どこだ!?どこだあぁ!!?)」
セイルは走った。
走りながらサーラとライラの姿を探す。
だが街中は祭とあって物凄い人ごみ。
そう簡単に見つけられるはずが無かった。
いや、見つけろという方が無茶だ。
まるで砂漠に落とした一粒の小石を探すような物…。
(それでも見つけなきゃ…いや!見つけるんだ!!)
そんな彼の耳にまたもや残酷な報せが飛び込んで来る。
「…おい!!大変だぁ!!またまた殺しだってよ!!」
「マジかよ!?三件目だぜ!?」
「一体どうなってるの!!?」
「衛士隊は何してるんだ!!?」
(まさか……っ!!?)
一瞬、セイルの脳裏に嫌な予感がよぎった。
「…で今度の被害者は!?」
「若い夫婦と幼い息子だってよ!斬殺されたそうだ!」
「酷え…!!」
「犯人は人間じゃねえよ!!」
憤る街の人々…だがセイルだけは僅かに安堵していた。
(よ、良かった…サーラさんじゃなかった…)

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