異色の瞳 82
女性は床に倒れると、顔をおぞましい表情へ変えた。
赤かった血液も黒く濁ったような液体へ変わる。
「さ…さすがダナ…。ゼロ…」
魔物は血を噴出しながらゼロに言った。
ゼロは剣の先を魔物の喉元に当てて問う。
「誰だ?お前は?」
「ワタシは…ドリア様の部下ダ…」
「ドリア?風呂で俺たちを襲った奴か?」
「ソウダ…貴様に種ヲ植え付ケロと。油断しているトコロを狙ッテ…」
「…本物の宿の使用人はどうした?」
「…フフフフフ…切り刻んでヤッタ!キサマもいずれソウなるのダ!!!」
ぶしゃああっ!!
血しぶきが上がり、魔物が絶命した。ゼロの剣が魔物の首を貫いている。
「カスが…」
ゼロの瞳は金色に光を放っていた。
一部始終を見ていたフィウは小さく震えていた。
あの時の…洞窟ほど冷酷ではないが、やはりゼロの裏の表情が怖かった。
しかしゼロがこちらを向いたとたん、その表情は先程までの柔らかな少年の顔に戻っていた。フィウが安心する暇も無く、ドタドタと足音が近づいてくる。
「あ!ゼロさん、フィウさん、大丈夫でしたか?」
「おう、エレン!ああ、なんとかな」
「そっちはどうだったの?」
「それが…下の厨房で女の人が血だらけで倒れてて…これはやばいと思って皆を確認してたんです。」
「その女の人は…?」
「あぁ、レオナちゃんがすっごい魔法使ってくれて…虫の息でやばかったみたいなんですけど、あっという間に回復してました!」
「ひぇ〜〜〜、さっすがだな、あのチビ達…」
「でも良かったぁ…」
フィウは女性の無事と…そして笑顔のゼロにも安心し、つられて笑った。
「あー…でももうこの村には居れないな…」
「そうね…関係ない人を巻き込んじゃったし…」
「エレン、みんなに伝えてくれ!この村を出るから準備してくれって!」
「分かりました♪あ…それと…セフィルさん、目が覚めましたよ!」
「そっかぁぁぁぁぁぁ…」
ゼロは親友の無事に心から安心できたようだった。
ゼロは急いで荷物を纏めると、セフィルの元へ向かった。
が、本人を目の前にすると何故か照れ臭くなり、ぶっきらぼうになってしまう。
「ったく…あんなんにヤられやがって…心配したぞ…」
ゼロの様子から何と無くソレが読み取れた気がして、セフィルはニヤつきながら返す。
「いやぁ〜まさかあんな美人にヤられるとは思って無くてさぁ〜…すまんかったな…」
ゼロよりも少々身長の高いセフィルは、謝りながらもゼロの頭を優しく撫でる。
「心配してくれて、さんきゅ」
「…ガキ扱いすんな…」