異色の瞳 22
エレンやセフィルも各々の部屋へと入って行く。
ゼロの変化に気付かずに。
全てが寝静まった頃、ゼロは城を抜け出す。
何時も以上に深く、濃く輝く金色の瞳。
「くっくっく…久々に疼いてやがる…」
天龍の血が騒ぎ出している。
覚醒しているとはいえ、まだ扱い方の解らないゼロには、本能的な疼きが来るまで溜まらないと、その力が解放できないでいるのだ。
今までの戦闘では、本来の力の三分の一程度も発揮できていなかった為、血が、深い意識が…疼き出す。
「今夜は楽しめそうだぜ…」
一方城では、ゼロがいない事に気付き、セフィル達が探していた。
「ったく…ゼロの奴、何処いったんだよ…」
「黙って出て行く事ないじゃんねぇ〜?」
セフィルとフィウが口々に文句を言う。
「ぁ…もしかすると、レニアさんから聞いた洞窟へ行ったのでは…?」
エレンが言うと、二人は
「マジかよ…一人で無理じゃないか?」
「でも…ゼロさん笑ってたから…」
「そういう事は早く言いなさいよッ!」
急いで部屋へ戻り、装備を整えて出発する。
「なんだぁ〜?人間の小僧が喰われに来たんかぁ?」
門番らしきモンスターが話し掛けてくるが、その言葉を発した直後には、既に肉の塊になっていた。
「人間のガキの分際で…!」
中から出て来たモンスターが指笛を吹き、仲間を呼ぶ。
だが、その指笛の音も直ぐに途切れる。
淡く金色に光る剣が空を切る度、肉の塊が増えていく。
「此処か…」
セフィル達が洞窟の入口へと着くと、早速モンスターの残骸が目に入る。
かなり巨大な筈の門番のモンスターは、左肩から右の脇腹までを両断されて倒れていた。
セフィル達は言葉を失い、恐る恐るだが中へと進んでいく。
「ぅ…」
濃い血生臭い匂いに、モンスターの残骸。
どれも両断されて落ちている。
ピチャ…
足元は血の海だった。
「マジ…かよ…」
漸く紡ぎ出した言葉に皆息を飲む。
「とにかく…進みましょ…エレン、大丈夫?」
「ぅん…」
フィウがエレンの手を取り、歩き出す。
暫く進と、漸く動いているモンスター達を発見した。
だが、それも幻であったかの様に肉塊に変わっていく。
十数体に囲まれていた筈のなのに、あっと言う間に肉塊にしてしまう。
「ゼロッ!」
骸の中心で、金色の瞳を光らせ、淡く金色の光を放つ剣を振るい、反り血に染まった人物の名を、フィウが叫ぶ。
だが、ニヤリとフィウ達を一瞥すると、奥へと進み出す。
その表情にフィウ達は凍り付く様な恐怖感を覚える。
「ゼ…ロ…」
足がすくんで動けない。
何とか動ける様になった頃、モンスター達の悲鳴が再び聞こえ出した。