異色の瞳 105
大急ぎで路地を出ると、出来るだけゼロの無残な姿が見えないように気をつけつつ3人は宿へ逃げ戻った。
「う・・・うううっ・・・うわぁーー!!」
宿に着いて、皆の顔を見たとたん、張りつめていたものが切れたらしく、ゼロは人目をはばからず泣き出した。
同時に、フィウたちもその酷い姿に言葉も出ない。
ただただ立ちすくんでいるフィウ達に説明もせず、ディークはゼロを部屋へと運ぼうとした。
「まって、俺らが運ぶ。」
「任せてください」
名乗り出たのはライムとレオナだった。その顔は、いつもの無邪気な表情では無く少し強張っているようだった。
2人にゼロを頼んでディークが広間へ来ると、集まった皆に迫られどう説明すればいいのかあたふたしているセフィルがいた。
「何があったの?ゼロはどうして…?!」
「…落ちつけ、報告をする」
そして大きなテーブルに皆を促し、自分もゆっくりと椅子に腰かけた。
「…結論から言えば…作戦は失敗している。」
「…そうなの?…」
「アジトは分かったんだぜ!でも、ゼロのやつが一人でいいって言うから俺は…。くっそぉ…俺も一緒に行ってりゃ…」
「…おそらくゼロは客のふりをして潜入し、隙を見て獣人を解放するつもりだったんだろう…。だが何か…相手の罠か何かにかかってしまった。そして奴らに…」
「…」
ヤルやレースが俯く。
「…ゼロはしばらくそっとしておけ。へたに慰めようとしないほうがいい。それよりも…」
ディークが皆を見まわして言う。
「…問題は奴らだ。ゼロが逃げたことで奴らも何らかの行動を起こすだろう。考えられるのは…この街から逃げることだろうがな。せっかく突きとめた奴らをむざむざ逃がすわけにはいかん…」
「た、確かに…」
「…一刻を争うスピードで奴らは逃げ支度をしているだろう。こちらも…すぐに出直すぞ」
ディークが立ちあがり、セフィルも立った。
「お、俺ももっかい行くぜ!ゼロがあんな事になって…なにも出来なかった分、今度は俺がやってやるっ」
「偉いね〜さすがセフィルー!」
茶化すような声で現れたのはライム。レオナも一緒だ。
「ゼロは…?」
「大丈夫です、少し強めの魔法で眠らせました。傷の手当てもばっちりです。今はゆっくりさせたほうがいいですよ」
「そう…良かったぁ〜…」
「え、と、それよりも…」
「ん?」
「また乗り込むんですか?ディークさん」
「…ああ、そうだが…」
双子は顔を見合わせると、
「じゃ、俺も一緒に行くよ。」
と、無邪気な顔。ライムだ。
「ええ?!お前も行くって〜?なんでだよオイ!?」
「うっさいよセフィル!」
ライムは軽くセフィルを払うと、急に神妙な表情で皆に告げた。