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メイド・ナイト・レジェンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メイド・ナイト・レジェンド 10

エドガーは、早速各部隊に指示を出している。
ジークオルド達は事態を問題視しているが、アンナ=カーリンは笑みを浮かべている。

「何か策があるのだろう?」
「アドルフスブルクの連中を使うわ」
「なるほど、交易が混乱すれば戦費も足らなくなるな」

アドルフスブルクは本来は王国の一都市なのだが、元々が独立した都市国家だった関係や、国が乱れた折には群雄が交渉場所にも使ったため、一種の中立地帯になっていた。ここで自領では産しない物品を入手している領主が多く、ここを麻痺させれば連合軍は未発に終わる、そういう読みだった。

商業都市だけに商人たちの力が強く、多くの情報が流れる。噂や陰謀論に過ぎない物から、ジークオルドが反逆する前に、北方の交易動向などから北方で何らかの軍事作戦が始まると読み取るなど、侮れないものがあった。
その彼らの間で流れる情報を集めたり、いろいろな流言を流したり、一部商人の懐柔を図るなどの策略は、前々からアンナ=カーリンが行っていたが、それで南方諸侯を混乱させる気だ。

「思いっきりかき回してやれ。あわよくばこちらに与する者も出ればなおいい」
「やってみるわ。こちらに引き込めるかは難しいから、混乱を優先する」
「それでも十分だ。頼むぞ」

アンナ=カーリンが何名かの者に指示を下すと、彼らは準備を整え、行商人などに身をやつして出発した。





「おいしいー」
「このスープもコクがあっていいよね」
「この肉の焼き加減もいいな。さすがエクセレンだ」

メイド達が夜営でエクセレン達の料理に舌鼓を打っている。
彼女達が久々に温かい食事を摂れたことで、盛り上がっていくのをアナンは内心で安堵しつつ見ていた。
彼自身、彼女たちの主君としてここまで緊張の日々だったし、疲労感をできるだけ表に出さないでここまで来るのに苦労していた。
今も美味な料理とメイド達の喜びぶりに、ようやく一息付けた心地だった。

「ほら、アナン様、こちらのスープもいかがですか」
「おお、いたたこうか」

エクセレンらと炊事をしていたメイドの一人、クリスタ・クリムズンだ。
彼女もこの夜営地に来るまでは疲労の色が濃かったが、こうして皆でおいしい食事ができたことで少し気力を取り戻したようだった。

王宮で食していたような、凝ったメニューではない。
焼いたイノシシ肉、それに川魚の焼き魚、イノシシ肉と野菜のスープといった野性味もある料理だが、今回の食事は王宮で厨房担当だった者の技とメイド隊の戦闘団の野戦炊事の技を組み合わせ、シンプルだが実に美味いのだ。
食べた者が美食家なら細かい味付けなどにもこだわったのかもしれないが、アナンにとっては、彼女たちの心づくしの食事は十分に素晴らしいものだった。
それよりも、皆が一息つき、気力を取り戻したことの方がよほど嬉しく、食事を楽しむ彼女達から自分も元気をもらっていた。

まずは、皆が元気になってくれてよかった。とアナンは思う。
彼女たちを率い、護られ、道中を共にして、アナンとメイド達は強い結束を育んでいた。

仮初めとはいえ、久々に得た落ち着いた一夜。
皆がたらふく食べることができ、交代で夜警の任に当たる一部のメイドを除き、設営した寝床で休むことができた。
だが、アナンの目の前では、一つの小さな争いが起きつつあった。

すなわち、誰が彼のそばで寝るのかを巡る争いだ。
護衛としてだけではなく、求められれば体も開くこともその役目に含まれるのだから、当然と言えば当然なのだが……

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