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メイド・ナイト・レジェンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メイド・ナイト・レジェンド 9

「そういえば、所々広いところがあるんだな。誰が手を入れてるんだ?」
「すれ違うこともできないと、困るから、渓谷の皆で少しずつ削ったりして広げてるんだ。野宿の場所でもある」

少し広い場所が間道の途中に数か所あった。ヴィクトリアは、それらの一部に工事した形跡を見出していた。それにサーシャが説明する。

「なるほどね」
「しかし、我ら全員の夜営となると…」
「次の分かれ道、本当は右に行くんだけど、そこからさらに二日かかる。左側はもっと北の集落へ行く道だけど、入って二刻ほど歩けば、僕たち全員が夜営できるだけの広い場所がある」
「すこしの寄り道というわけか…殿下、ここは寄り道して夜営しましょう」
「僕もそれがいいと思うよ」

ヴィクトリアとサーシャの提案を受けると、アナンも疲れ切ったメイド達を見回し、頷いた。

「では調べてまいります」

一言残して、レグリア達が先発する。普段表情を見せない彼女が、やや安堵したような顔をしてた気がしたのは、アナンの気のせいだろうか。
やはり彼女も疲れているのだなと思い、自分達の判断は誤っていなかったと思った。

「待ち伏せも何もありませんでした」

報告を受け、アナン達が広い場所に入ると。

「広いですね」
「こんな間道の一部とは思えないほどです」
「夜営には十分だ」
「これなら、炊事もできますね〜」

草に覆われた所も多く、荒れた感じの無い場所だった。
ようやく、本格的に夜営できる場所が見つかってメイド達もアナンも喜んでいた。
炊事を主に担当するメイドの、エクセレン・ペデスタルも喜びの声をあげている。
皆はこの数日、携行食に頼っていたから、彼女の声に歓声が上がる。
早速、メイド達は炊事の支度を始めた。
パンを焼く香りや、狩ってきた猪の肉を焼く香りが漂い始める。



その頃、アルヘイムでは。

「貴方、どうもアナンは南方に逃げたようよ」
「何だと?」

金髪のロングヘアーをアップにまとめた美女が、ジークオルドへ告げた。
薄手の板金鎧を身に着けたその姿は、女性騎士とも見えるが、物腰は主君に対するというより恋人に対するものだった。
彼女の名はアンナ=カーリン・ウラヌス。ジークオルドの恋人で、北部の有力者の娘だ。
そして、単なる恋人にとどまらず軍師を務めている才媛でもあった。
ジークオルドの問いに、今度は中年の武将が答えた。北方守備部隊の副司令官、エドガー・アランソンだ。名目的な北方守備軍司令官として事実上左遷されていたジークオルドに代わり部隊を切り盛りする役割を担っていた人物だが、今ではジークオルドに心服している。

「はっ、ジークオルド様、アンナ=カーリン殿、実は南方の森林地帯で追跡部隊のうち3部隊が連絡を絶っております」
「おそらく、アナンとその配下の者たちによって倒されたのでしょう。別の追跡部隊が、対人戦闘の形跡を見つけているわ」
「だろうな。あの森は人跡未踏の闇の森では無い。正規兵の部隊なら3つも遭難するなどありえん」

アランソンも、無能ではない。ジークオルド以上に偵察を重視して軍勢を訓練している。
送った追跡隊も、小競り合いして敵の力を測る威力偵察部隊として編成された部隊だ。
アナン達を見つけられず生還した各部隊も、森で遭難した者はいない。

「それにしても、南の連中は盾突く者が多くていかんな」
「さもなくば日和見を決め込むか…あれだけ盛大にこのアルヘイムを破壊して見せたのに、これほど南部の者どもが言うことを聞かぬとは」
「タンネンベルク侯爵やクロンシュタット伯爵、クローディアス伯爵らは兵を集めているようよ。王に担ぐ王族として、誰か王家の傍流の者を祭り上げられて連合軍を組まれるだけでも、討ち果たして行くには時間がかかりそうね」
「アナンが合流すれば面倒だ。もっと追跡部隊を増やせ。「銀の怪鳥」を使っても構わん。空から襲ってしまえば盾突くのを躊躇する奴も出るだろう」
「はっ!」

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