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メイド・ナイト・レジェンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メイド・ナイト・レジェンド 7

「皆ッ!」
「「「「「・・・・・」」」」」
近づくにつれその後ろ姿が自分が良く知る人物のモノへと変わった時、アナンは彼女たちに声を掛ける。
しかし、彼女たちはアナンに背中を見せたまま、うんともすんとも言わない。ただ立ち尽くしているだけだ。
「皆? どうかしたの・・・・か?」
駆け足気味に彼女たちの列に突っ込んでいき―そして絶句した。

燃えているのだ。

自分達が立っている丘の数十メートル下、ネイブラ城もアルヘイムの街もそれを取り巻く大地の全ても、皆等しく紅蓮の炎を纏っているのだ。
真っ黒い煙を大量に出しながら燃え盛っているソレは、まさに地獄絵図といっても過言ではない。

「ぁ・・・あぁ・・・」
隣には、顔全体を絶望一色に染めているテルルが言葉ではない言葉を口から零している。
他の四人もテルルほどではないが、皆一様に表情を硬くさせていた。
「これは・・・あまりに酷すぎる」
地獄絵図と成り果てた自国の様子を見て、アナンはギリッと唇を強く噛み締める。
唇からはほんのりと鉄の味がした。
燃え落ちる建物、崩れる音。
炎上する市街の上空には、彼らの見たことも無い銀色の怪物が何体か飛び交っていた。

「何だあれは……」

少なくとも、伝説に出てくるような生き物の何にも似ていない。
竜種や、ロック鳥といった幻獣やモンスターの姿でもない。

銀色の棍棒の前後に、翼をつけたような何かが轟音を立てて飛び交っている。
それが降下するたび、炎や光を放っては地上に破壊がまき散らされ、生物であった何かが無機物へと変わっていくのだ。
炎の中で、動き回る黒騎士どもの姿も、ちらりちらりと見える。


「……行きましょう。残念ですが、今のアルヘイムを救うのは無理です」
サーシャに促されたアナンは、無言で頷き、退却の道を歩みだした。
そのアナンが、歯も割れよとばかりに強く歯噛みして悔しさを堪えているのを、メイドたちは見逃さなかった。そばにいたサーシャにはその音が聞こえたほどだ。


そして……

森の中の間道や獣道を通り、アナンとメイドたちは必死に進む。
敵の捜索部隊と思しき兵隊と遭遇しかけたこともあった。
野生のモンスターにも襲われた。

「マンティコアです!」
「おのれっ!」

サーシャが斬りつけたり、アスティナが矢を撃ちこんだりする。
どんなモンスターが相手でも、できるだけ静かに戦う必要があった。
だからこそ、彼らは襲撃された時は速攻で一挙に倒し、すぐに逃げていたのだが、それだけに疲労も激しかった。

何とか倒したマンティコアを、ニアが完全に焼亡させ、それを証拠隠滅の為に皆で急いで埋める。
最初は碌な道具もなかったのだが、倒したモンスターの骨などからスコップや鍬を作ってふるっている者もいた。

パチパチ…
一つだけ焚火をしながら、アナンとメイド達が夜営をしていた。
協議しているが、眠ってしまっているメイドも多い。

眼鏡をかけた理知的で巨乳のメイドが言った。艶やかだったであろう黒髪は痛み、メイド服にも返り血が残り、ここまでの道のりの困難さを物語っている。

「倒したモンスターは50頭以上、討ち取った敵兵は30人以上……これが冒険者なら大戦果ですが、今の私たちにとっては余計な手間であり要らない足跡です」

ヴィクトリア・ノイマン。メイド序列第三位。近衛隊員でもあり、本来なら戦況に応じて適宜メンバーを入れ替えて編成されるノイマン戦闘団を率いて戦っていたはずのメイドだ。
彼女の言う通り、モンスターの死骸はまだしも、隠れきれずに途中遭遇した敵の捜索部隊30名ほどをアナン達は討ち取っており、彼らが消息を絶った事で敵の目がこちらを向いた可能性が高い。

「しかし、早く南方の諸侯の元へ行かないと先に反逆者どもがかの地を押さえてしまいかねない。迂回している余裕もない」
「彼女達をご覧ください。疲れ果てており、休ませねば落伍者がいずれ出ます」

サーシャの反論にも、ヴィクトリアは冷静に返す。
そこで、考え込んでいたアナンが皆を見回しながら問う。

「うむ……ここから、一番近い街か村落はどこだろう?」

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