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メイド・ナイト・レジェンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メイド・ナイト・レジェンド 6

「はッ、敗戦国の将が。この城・・・いや、この国はもう俺のモノなんだぞ?」
勝ち誇るように両腕を広げ言うジークオルド。
「その人を苛立たせる口調と態度・・・王都を追放されてもまだ治らんか。 国王が知ったら何と思うか・・・」
そんな彼に、マクレミッツは冷たい目と口調で言う。

ジークオルドは、他人を見下す態度や口調で国中の民から嫌われていた。それに加え無類の女好きでもあったため、それがさらに拍車をかけた。

それ故、国王は彼を北の国境沿いにある砦に追放したのだ。

「負け犬風情が・・・」
彼の言葉に先ほどまでの余裕と嫌味を混ぜ合わせた笑みは消え、悪鬼の様な形相で彼を睨みつける。
「ふん、ワシが言った事は事実だろう。 それに、貴様は王の器ではない。身をわきまえろよ・・・小僧」
形勢逆転、とばかりに余裕の笑みを見せるマクレミッツ。
「殺れ」
整った顔を醜く歪めながら、ジークオルドは近くにいた騎士に命令する。
命令された騎士。周りに居る騎士とは違い、何処か禍々しい形の甲冑を身に纏っている。
スラリと抜かれた一本の剣。銀の装飾が施された柄に悪魔が翼を広げた様な印象を持たせる鍔。鋸の歯を思わす根元から細く真っ直ぐに伸びる銀色の刀身。
抜いた黒騎士の雰囲気と相まって、まるで魔剣の様な風貌をしている。
「ッ?! その剣、まさか・・・貴様ぁッ!!」
剣を見て、ソレが何かを一瞬で理解したマクレミッツは鬼の形相でジークオルドに突進する。

「ふんッ。 俺をあんなド田舎に追放したお前達が悪い。 其処で俺が何をしようと俺の勝手だろう?」

両肩をすくませまるでバカにするように言う彼にマクレミッツの剣が届くことは無かった。

「・・・が・・・ぁあ・・・ッ」
「・・・」
剣を振り上げた姿勢のままの彼の前に、“鎧を貫き心臓を一突きした”姿勢で無言でいる黒騎士がいたからだ。
片言の言葉しか吐けないマクレミッツ。彼を突き刺した黒騎士は、何事も無かったように剣を引き抜き鞘へと納めた。
廊下に横たわる王国最強の騎士を、黒騎士は一目見ることもなく黒い海の一部へと消えていった。
「ははははははははッッッッ!!!!」
物言わぬ死体となったマクレミッツを見て、ジークオルドは右手で顔を覆いながら高笑いする。
まるで欲しいものを手に入れた子供の様に嬉々として笑うその姿は、窓から射しこむ夕日に照らされおどろおどろしい様子を晒していた。



「はッ、はッ、はッ・・・!!」
等間隔で壁に設置されたロウソクの火がうっすらと照らしている一本道。その道を、アンナ・ド・ラン・アルフィリアは息を切らしながら走っていた。
レンガで造られていた通路は今では土と岩そしてソレを抑える木の枠組みという簡素の造りへと変わっている。
「王子、出口はもうすぐです! ですので頑張ってください!」
彼が走る数メートル前方を疾走しているのはアスティナ・ハミルトン。ミント色のポニーテイルをなびかせて走る彼女の声にも疲労の色が混じる。

走り始めてどれくらいの時間が経過したのか。薄暗い一本道をひたすら走る彼らには、最早時間の感覚がなくなっていた。
「ッ! 王子、出口です!」
前を走るアスティナの声が洞内に響くのと、彼の視界に光が差し込んできたのはほぼ同時であった。
その声を合図に、アナンは悲鳴を上げている体に渇を入れる。そして、その光目掛けて突っ走る。。

「はぁ! はぁ! はぁ・・・此処・・・は・・・?」
薄明かりに土と岩だけの空間から抜け出すと、其処には不規則に生い茂る木々や草が彼の視界を埋め尽くす。
「どうやら森の中のようです」
彼の呟きに律儀に答えるアスティナ。
二人が出てきたのは、鬱蒼とした森林の中。
洞窟は周りの景色に溶け込んで、見つけることはまず不可能だろう。
彼女の言葉を聞きながら、アナンは深い息を吐き出す。溜まりに溜まっていた緊張を取り除くようなその様子に、傍にいたアスティナは苦笑を隠せない。
「ふぅ・・・それより、皆は?」
少しばかりリラックスできた彼はキョロキョロとあたりを見渡し、自分と逃げてきたメイドたちの姿を探した。
「王子、おそらくあちらです」
そう言って指差す方向に目を向けてみると、其処には幾人かのシルエットが出来ている。
それを見つけて安堵の息を吐くアナン。疲れた体に渇を入れ、ゆっくりとそのシルエットに近づいていった。

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