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メイド・ナイト・レジェンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メイド・ナイト・レジェンド 5



「はあぁッ!!」
鋭い雄叫びを上げて、アナンは最後の黒騎士を倒す。
床に転がる5人の黒騎士たち。絨毯は血で黒く変色し、彼らの衣服や武器にも返り血がべっとりと付着している。
「はぁ・・・はぁ・・・これで最後か・・・」
血まみれになり、もはや剣の役割を果たせない鈍器を手放し、肩で息をするアナン。
振り返れば、サーシャやニアも顔に大量の汗を滲ませている。
「はぁ、はぁ・・・ふぅ。 それよりも王子、此処は危険ですッ。 早く外へ!」
「そうですわね。 この城も敵に落とされるのは時間の問題。 アナン様、お早く外へ!」
王子に助言するサーシャにつられ、黒髪碧眼のメイドも彼へ催促する。
メイドの名はカナン・イストワール。序列第6位で神官を務めている。
「ふえぇ〜〜んッ! ご、ごわかったよ゛ぉ〜〜!!」
そして、アナンに抱きつき泣いているテルル。序列第4位にして、第一王子であるアナン専属の世話係だ。

「さて・・・どうする?」
ドアに寄りかかり、考え込むアナン。彼女たちの言うとおり、城内から響く怒声や悲鳴が無くなったのを見るに、この城は完全に敵の手中に収まってしまったのだろう。
だとしたら、こんな所で悠長にはしていられない。
彼の頭の中には幾つもの脱出ルートがあるが、先ほどサーシャから聞いた噴水の秘密通路からの進攻を考えると、使えるルートはおおよそ二つ。
一つ目、城の地下にある倉庫からの脱出。地下倉庫は此処を下れば近道で、出口は城から東に2キロほどの森の中。
二つ目、彼の自室。此処も噴水の秘密路と並ぶモノで、知って居るのは国王とアナンしかいない。
城から真北にある丘に繋がっており、其処からは城や城下が見下ろせる高台があるのだ。
しかし、彼には懸念もあった。それは、内通者の存在である。噴水の件でサーシャもソレを分かっているだろう。
特にメイド長である彼女は、顔が若干青くなっている。

「それで、王子。 どちらにするのですか? 下か、後ろか・・・」
下、後ろ。それは、今現在使えるであろう脱出路の位置を指し示している。
彼女も、今の城の状況を感じてこの言葉を使ったのだろう。

「うん・・・じゃあ「やぁっと、追いついたぁ!」って、イリス! アスティナ! 無事だったかッ」
アナンが言おうとした瞬間、廊下の向こう側から此方に向かって走ってきた二人が彼らと合流を果たす。
二人の無事に喜ぶアナン。彼女たちを残して来たサーシャも、安堵の表情を浮かべる。
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ。 はい、廊下にいた敵兵もあらかた倒しましたから、時間が掛かってしまいましたが・・・」
息を整えながら、微笑んで言うアスティナ。二人とも、休まず走ってきたのだろう額には汗が浮かんでいる。
「6人か・・・後ろめたいけど、早く城から出よう!」
「そうですね・・・」
歯を食いしばり、手をきつく握りながら彼は言う。その顔は、とても苦しげであった。
アナンの心境を理解したサーシャも、その表情を暗くさせる。しかし、何時までも此処に留まる訳には行かないのだ。

「アナン王子ッ!」
「ッ! マクレミッツ卿!」
彼の自室。扉を蹴破らんばかりに開けて入ってきたのは、白髪にシワ顔の一人の老人であった。
彼の名は、マクレミッツ・ダグラス。「剣軍」の二つ名を持つ、この国最強の騎士団長だ。
白い甲冑に身を包んだ老人は、齢60を過ぎても尚その実力は折り紙つきで、アナンやイリス、サーシャも小さい頃は彼に剣を習っていた。
「王子! この城は最早ダメです。 その鏡の裏にある通路からお逃げください」
「そうか・・・やっぱり・・・」
年老いてもその雰囲気を感じさせない力ある声を聞いて、アナンは唇を噛み締める。
「すみません。 メイドたち・・・王子を・・・頼んだぞ」
顔を伏せ、体を震わせながら搾り出すように言うマクレミッツ。そんな彼の様子に、メイドたちはただ無言で頷いた。

「王子・・・また会える日を・・・」

巨大な鏡の裏にある通路。その向こう側へと姿を消すメイドたちに続こうとした時、背からマクレミッツが声を掛ける。
その穏やかな口調の裏にある覚悟を感じたアナン。僅かな躊躇の後、ソレを振り払うように通路へと駆け込んだ。

「行ったか・・・」
一人ポツンと佇むマクレミッツ。後ろから聞こえていた足音が完全に聞こえなくなったのを確認すると、彼は一切の迷いのない足取りで部屋を出て行った。
出た向こう側にあったのは“廊下を埋め尽くさんばかりの黒騎士たち”。

「マクレミッツ卿・・・其処を退いてもらおうか?」

黒い海が左右二つに分かれ出来た道を悠々と一人の男が歩いてくる。
彼の名は、ジークオルド・ゼ・ウルデ・アルフィリア。齢23でアナンの実兄。“元”王国第一王子であった男だ。
そんな彼は、馴れ馴れしい口調でマクレミッツに言う。
「・・・裏切り者の売国者が・・・」
シワだらけの顔をさらにキツくさせ、吐き捨てる様に言うマクレミッツ。
彼の体から溢れんばかりの殺気が廊下を埋め尽くす。
しかし、目の前の優男はニヤニヤとした見る者全ての神経を逆なでする笑みを止めめることはない。

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