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メイド・ナイト・レジェンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メイド・ナイト・レジェンド 4

その無残な姿になった庭園の中央。『水が出なくなった』噴水が置かれている所に陣取っている六人の騎士たち。
内五人は噴水の前で仁王立ちして、リーダー格らしき騎士を守るように扇形に陣形を組んでいた。
そして、その涸れた噴水の中から出てくる無数の黒騎士達。
(うそ・・・どうして此処の秘密路を知ってるの?!!)
イリスと背中合わせになり、サーシャは自分を仕留めようとしている二人の黒騎士に警戒しながら、チラリと見たガラスの向こう側の敵に内心驚愕する。

庭園中央の噴水。ソコは、万が一の事があった場合に使用できるこの城最大級の秘密通路がある。
通じているのはこの城から北西10キロ地点にある国境沿いの砦。知っているのは極一部で、メイド内でも知しるのはメイド長であるサーシャただ一人。
他に知っている者とすれば、国王とアナン王子、それから騎士団長のマクレミッツ卿に宰相のゴウドン卿しかいない。

そんな秘密の秘密と言える通路の場所を知っていて、それを進入経路にする敵のやり方にサーシャは冷や汗を流した。

「ちょっと、ちょっと! コレって結構マズイんじゃない!?」
突如、背後から聞こえたイリスの叫び声にハッとするサーシャ。すぐさま剣を中段にして構え、目の前の敵二人に意識を戻す。

渡り廊下の中央で、自分とイリスを仕留めようとする敵四人に前後を挟まれる形で相対しているこの状況。
戦いの訓練を受けている二人であるが、女性と男性では体力的面で大きな差が今になって出始めてきた。
少し肩で息をする二人に、相手の騎士は呼吸一つ乱れる事無く剣を構えている。
「はぁ・・・はぁ・・・ねぇ、サーシャ? 何かいい案ないの?」
「はぁ・・・はぁ・・・ある訳・・・ぜぇ、うっく・・・無いでしょ」
背後から質問してくるイリスにサーシャは呼吸を乱しながら答える。そろそろ体力も精神も限界が近い。

「「「「!!!」」」」
そんな彼女たちの決定的隙を見逃す相手はいない、四人の騎士は一斉に二人へと急接近して来た。
「させません!」
危機的状況の中、凛とした叫び声が渡り廊下に響き渡る。そして次の瞬間、サーシャ側の二人がバタリと床に倒れ、其処から動く事は無かった。

「なぁ!?」
「へ!?」
突然の事に驚き立ちすくみ二人。敵も同じようでイリス側の敵は素早く後ろを振り返った。
「無事でしたか? サーシャ、イリス」
「アスティナ!」
聞き覚えのある声の主に、イリスは歓喜の声を上げた。
二人から10メートル、敵からは6メートル先に悠然と立ち、木製の弓に新たな矢を番え相手二人に向けているのは、アスティナ・ハミルトン。ミント色の髪をポニーテイルにトパーズ色の瞳を持ったメイドだ。
先ほどサーシャ側の二人を倒したのも彼女が放ったものだろう。

「アスティナ! ありがとうついでに援護して! そして、サーシャ! あんたはアイツの所に!」
「そんな事、言われなくても分かってる! そっちこそ無事にね!」
「分かっています。 ではイリス。 行きますよ!」
仲間の援軍を得て、一気に士気が上がったイリス。絨毯を蹴り、目前の敵との間合いを詰める。
そして、イリスが動くのと同時に、アスティナも弓に番えた矢を敵の急所へと飛ばす。
4対2から2対2になったこの状況。数の上では同じだが、それでも相手からは動揺した気配は微塵も見られない。
仲間を背に、一人王子の部屋へと急ぐサーシャ。相手の不気味な静けさに薄ら寒い恐怖を覚えながら、廊下を走っていく。

――――・・・

走り出してからおよそ10数分。王子の部屋へと続く廊下へ到着したサーシャは、そこで何人かの敵と抗戦しているアナンと三人のメイドを発見した。
「王子!」
サーシャの鋭い声にアナンと三人のメイドは気づき、その顔を若干の安堵で彩られる。
「ッ! サーシャか!」
「あぁ〜! サーシャちゃん!」
「ほぉ・・・無事だったのね・・・」
「良かったですわ。 サーシャさん」
四者四様の口調と表情で嬉しさを現す四人に、サーシャも僅かながらに微笑んでしまう。
そして、そんな空気に苛立ったのか一人の黒騎士がアナン目掛けて突進してくる。
僅かの間に生まれた絶対の隙。そんな隙を突かれたことで、アナンや他の二人のメイドは体を硬直させてしまった。
「させないわ・・・」
しかし、メイド三人の内の一人。黒い髪の長髪にレッドダイヤモンドの様な色の瞳をもった、ポーカーフェイスのメイドがアナンと黒騎士の間に割り込んで来た。

突如、剣の軌跡に入ってきた一人のメイドに黒騎士は何の反応も示す事無く、彼女もろともアナンをほふろうとする。

「無駄よ。 炎よ、走りなさい・・・」
今にも殺さんとする凶刃を前に、メイドは冷静な態度を崩すことは無かった。そして、その紅い瞳は真っ直ぐに黒騎士を捕らえている。
開いた小さな黒革の本を片手に、彼女はポツリと呟く。すると、彼女の目前に小さな火の玉が現れ、さながら弾丸の様に黒騎士目掛けて飛んでいく。
剣を振り上げていた状態の黒騎士は、その炎の弾丸を交わすことなど出来るはずも無く、炎にまみれた。
苦しげに床にのた打ち回る敵。ソレを、ただ冷たく見下ろす彼女は目を閉じるとクルリと背を向ける。
「後は任せるわ・・・」
「相変わらずだねぇ・・・ニアは・・・っと!」
無表情で此方にやってくる彼女を交代する形でサーシャは彼女の背を狙ってきた黒騎士一人を倒す。

ニア・マスコット。ネイブラ城に仕えるメイドで序列は第10位。この城にある図書館の館長を勤め、知識量で彼女に勝る者はこの国には存在しない。

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