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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 8

しばらく呆けたように立っていたレフェリーだったがようやく自分の仕事を思い出したらしく、何か大きな声で観客に向けて叫んだ。おそらく試合の成立を宣言したのだろう。貝丞はTシャツを脱いでたたむとタオルと共に足元に置いた。鍛え上げられ無駄のない体が露になるとまたも観客はどよめいた。
――今度は普通に驚いたみたいだな。
レフェリーが手招きし貝丞と黒人が舞台の中央に進み出た。まず黒人の名前がコールされる。
「オグロロ!!」
大きな歓声が上がった。続いてレフェリーが貝丞のほうを向いたので「カイスケ」と自分の名前を伝える。
「カイスケ!!」
貝丞の名前がコールされるとまた歓声が上がった。心なしかオグロロへの歓声より高い声が多いような気がしたが何故かは分からなかった。

10分後、貝丞は舞台の片隅でオネンネしていた。
といってもノックアウトされたわけではない。それ以前に勝負が始まってさえいなかった。試合が賭けの対象になっておりその集計に凄まじく時間がかかっているのだ。例の賞金はおそらく賭けの収益から出ているのだろう。
――見物料を取らないんだから仕方ないか。
とは思うのだがいくらなんでも間が持たない。片や貝丞はとうとう業を煮やし、「始まったら起こしてくれ」と日本語でレフェリーに伝えるとそのまま頭からタオルをかぶってお昼寝タイムに突入した。片や少なくともこの日二回目の待ち時間であろうオグロロは延々と観客に向けてポーズを取ったり雄叫びを上げたりしてして無駄に体力を消費していた。
顔になにやら柔らかいものがまとわり付いてきて呼吸ができなくなると言う悪夢に貝丞がうなされ始め、オグロロのパフォーマンスのネタが尽きかけた頃ようやく集計が完了した。先程の言葉が通じたわけではないだろうがレフェリーが貝丞を起こしに来る。起床した貝丞は開口一番
「息ができるって素晴らしい!!」
という言葉を発した。そのまま立ち上がり舞台の中央へと歩いていく。
――人間が眠ってから夢を見るまではしばらくかかるはずだから、大分手間取っていたみたいだな。まあ、おかげで相当休ませてもらったが。
中央で相手と対峙すると、体格差が改めて実感できた。身長で約40センチ、体重で5〜60キロ違うんじゃないかと思えるほどだ。競技性を重んじる日本の格闘技では、極端に体格の違う選手を戦わせることは滅多にない。貝丞も、試合で自分より大きい相手と戦ったことは何度もあるが、ここまでの巨体を持つ相手と向かい合ったことは、あまりなかった。
――こうして見るととんでもなく大きいな。どこまで技術でカバーできるだろうか?
まずレフェリーが、観客に向けて何か叫んだ。

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