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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 7

初めの内は白人も意識があったらしく両腕で抵抗していたが、次第にその目が虚ろになり動きが止まっていった。それでも黒人はその丸太のような腕を振るって殴り続けている。
――もう止めないと危ないぞ!レフェリーは何やってるんだ!!
だがレフェリーが黒人を止めに入ったのはそれから大分時間が経った後、白人が血まみれになって顔もよく分からなくなった後だった。
――ふざけやがって!選手の安全を何だと思ってるんだ!
一層腹立たしいことに黒人が無抵抗の白人を殴っている間観客はヒートアップしてそれを煽っていたのである。
格闘技を純粋にスポーツとして捉える日本とは違い単なる残酷ショーと見なされているのだろう。それは良いか悪いかというより文化の違いなのだろうが貝丞には許容しがたいものがあった。
先程の比ではなく激怒した貝丞が舞台の上に目を戻すと白人が担架で運び出され黒人がレフェリーから勝ち名乗りを受けているところだった。続いて賞金と思しき紙幣の束を―貝丞はこの世界の貨幣をまだ見たことはなかったが多分そうだろうと思った―受け取った。もっとも黒人のセコンドらしき男が舞台に上がってきてすぐに取り上げて行ってしまったが。
黒人はそのまま舞台を降りずに雄叫びを上げ、観客達を挑発するように手招きをしている。誰か自分と戦う者はいないかと言っているようだ。レフェリーもまた何事か観客達に呼びかけている。どうやら事前に出場選手が決まっているわけではなく、腕に覚えのあるものが飛び入りで参加するシステムのようだ。
――やってみるか。
改めて舞台の上を眺めてみるとおびただしい血があちらこちらに付着していた。今ので何試合目なのか知らないがとにかく尋常な量ではない。
おそらく他の試合でも似たり寄ったりの光景が繰り広げられたに違いない。そして観客達は格闘技とはそういうものだと思い込んでいることだろう。だが・・・
――俺があの男を必要以上傷つけずに倒したら、そういうやり方もあるんだと分かってもらえるかも知れない!
もちろんそう上手くいくとは限らない。少なくとも体格では向こうの方が圧倒的に優れているのだ。また仮に勝ったとしても負傷したら今後の行動に大きく支障をきたすだろう。だがそれでもこの状況を放置して日本に帰る気にはなれなかった。
――それに、あれだけの賞金を今日一日で稼げば地道に職探しをしなくてもよくなる!
そんな打算的な考えも心にチラ付いた。新しい挑戦者が一人も現れていないことを確かめた貝丞は、「やります!」と日本語で絶叫して手を挙げ、舞台に上った。
舞台の上に立ちキッと顔を上げると歓声ではなく大きなどよめきが起こった。格闘家の黒人とレフェリーも貝丞を見てあっけにとられたような顔をしている。
――何を驚いてるんだ?まだ何もやっちゃいないぞ。それとも小さいのが出てきたから馬鹿にしているのかな・・・

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