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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 50

人が一世一代の決意を固めたというのに、結局そんな話か。軽い苛立ちを覚えた貝丞は、二人を説得しようと口を開いた。
「あの、今一応シリアスな展開なんで……」
『ええ。ですからまじめに命令してください、ご主人様』
「ふざけてるのは、俺なのか……?」
貝丞はにわかに自信を失い、体から力が抜けるのを感じた。そうしている間にもラグーナとミュラは彼を押さえ付ける力を強め、
『さあご主人様、ご命令を』
『命令して! 早く!』
と催促する。どうやら彼女達の言う通りにするまで、ベッドから立たせてすらもらえないらしい。
観念した貝丞は、今までの人生で三番目ぐらいに投げやりな口調でつぶやいた。
「空の見えるところに、連れて行け……」

――で、またこうなるのね。
四つんばいになったラグーナの背中に揺られつつ、貝丞は内心でぼやいた。まあ、鞭を入れなくても前進してくれる分、先刻よりはマシなのかも知れないが……
最初に貝丞が“命令”を下したとき、ラグーナとミュラは何を勘違いしたのか、急に動揺し始めた。
『そ、そんなご主人様。いきなりお外でなんて……』
『だ、誰かに見られちゃうかも。でもご主人様の命令なら……』
どうも誤解があるらしい。貝丞は二人に“命令”の趣旨を説明することにした。
「そうじゃなくてね、実は、君達がさっき言ってたことなんだけど……」
『はい……』
「情けない話なんだけど、俺は未だに自分が別の世界に来てるってことを、はっきり認められないでいるんだ」
『そうなんだ。ご主人様……』
「でも、いつまでもそうしてる訳に行かないから、ここらで気持ちに区切りを付けたい。そこで君達に空の見えるところまで案内してもらって、星の並びを観測をしたいんだ」
『星……ですか?』
「ああ。そうすれば、ここが地球……いや、俺の産まれた世界かそうでないかはっきりするはずだ。そうなれば、俺がいくら現実から目を逸らそうとしても、向き合わざるを得ないと思う。みっともない話で悪いんだけど、少しだけ付き合ってくれないか? そんなに時間は取らせない」
貝丞は説明を終え、静かにラグーナとミュラの返答を待った。もしかしたら彼女達は、現実逃避している貝丞を見下すかも知れない。だが、それならそれで仕方ないと、彼は腹を括っていた。
『…………』
『…………』
しばらくの間、ラグーナとミュラは神妙な面持ちで考え込む。そして二人は、同時に貝丞に向かって頷いて見せた。
『分かりました、ご主人様……そういうことでしたら、ご案内します』
『そうだね。まだ夜も明けてないみたいだし……』
「そうか。ありがとう……」
まあ、呆れられはしなかったか。貝丞は胸を撫で下ろす。ラグーナはベッドを降りて部屋の扉近くまで歩くと、そこで四つんばいになった。豊穣な一対のミルクタンクが床にべったりと付き、あたかも6本足の動物のように見える。
『どうぞ。乗ってください、ご主人様』

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