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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 5

「やはりここはオーソドックスに、『旅行中に強盗に襲われて身ぐるみ剥がれました』とやるのがベストか・・・」
詳細に調べられたら出国記録がないのがばれるだろうが、その時はその時である。
「ともかく、何はなくとも、ここが何て国の何て町か調べないとな。話はそれからだ。あと一緒に働き口も探そう。いつ金が必要になるか分からないからな」
意を決した貝丞は通行人に混じって町を歩き始めた。Tシャツに短パンで歩いているのはさすがに貝丞一人だが、幸い人々の服装はかなりバラエティに富んでおり貝丞が浮くということはなかった。
歩きながら町並みを観察してみた。日本で見かけるものと大分デザインが異なるものの、建物はコンクリート製と思われるものが多い。道路は何だかよく分からないもので舗装されていた。電信柱がないが電気が通っていないのか、それとも電線を地中に埋没させているのかは分からなかった。ただ街灯、信号の類は見当たらない。
――夜に出歩くのは少しばかり危険かもしれないな。
さらに車道―道路は歩道と車道に分かれていた―を見ると人を乗せた車を妙な動物が牽いている。
大きさや形が乗馬用の馬に似た四足の動物だが蹄は二つあり頭に一対の短い角があった。
――牛の一種かな?この辺の名物なんだろうか?
何気なくその動物を目で追っていた貝丞だが、視界の端に異様な物が飛び込んできた。人一人を乗せたスクーターのような物だが、車輪がなく空中に浮いたまま移動しているのだ。
――いや、そんな馬鹿な!!
思わず声に出しそうになるが辛うじてこらえ、周囲から怪しまれずに済んだ。そうしているうちにスクーターは貝丞の視界から消え、見えなくなる。
――まさかね。見間違いだろう。
深呼吸して動悸を収めた貝丞は今の光景を見間違いで片付けた。神社から超自然的な力で遠い場所に飛ばされたことは信じられてもそれが21世紀の地球と全くかけ離れた所だとは信じたくない貝丞の心理がなせる技だったのかも知れない。何せ飛ばされたのが同時代の地球のどこかでなかったら、元の場所に戻れる可能性はほとんど絶望的なのだ。
「・・・さて。そろそろ本格的に探しますか」
貝丞が探し始めたのはまず英語の表記だった。グローバル時代、この町にも何かしら英語で書かれた物があるかも知れない。
「ダメか・・・」
看板、立て札などをつぶさに見てみたが、結局英語表記どころかアルファベットさえ一文字も見当たらなかった(もちろん日本語の文字など影も形もない)。この辺りでは英語は全く通じないのだろう。
「はあ・・・ヘビーな状況だな」
実際の状況は貝丞が考えているよりはるかにヘビーなのだがそうと知らない彼はまだ希望のこもったため息をついた。
「こりゃ長期戦になりそうだな・・・一旦働き口探して金を稼ぐか。そっちならボディランゲージでまだ何とかなるだろ」
そう思った貝丞は道路工事や建設工事の現場を探した。

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