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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 33

ラグーナは急いで貝丞の右手を放し左手を取った。先程と同じように両手で包み込み、呪文を唱えて光を生じさせる。やがて貝丞は左手からも負傷の感触がおおよそ消え失せるのを感じた。不思議な光がなくなり、部屋は再び廊下から漏れてくる照明だけに照らされる。貝丞の手を静かに放し、ラグーナは尋ねた。
『終わったわ、ご主人様……まだ痛む?』
「いや、全然……」
『ああ、よかった……元に戻ってよかった……』
ラグーナは床に膝をつき、涙を流して貝丞の右手に頬ずりした。
『うっ、うっ……ごめんなさい、ごめんなさい……』
ミュラに至っては跪いて貝丞の左手を取り、舌でペロペロ舐め始める。さすがにくすぐったい。貝丞は手を引っ込めようとしたが、ミュラにがっちり手首を握られていて動かす事ができなかった。
――仕方ないな。さて、問題はここからだ……
魔法の事も気になるが、とりあえずそんな物は後回しでいい。とにかくラグーナとミュラがもう自殺しないようにするのが今は先決だった。貝丞はベッドの上に正座したまま、二人が落ち着きを取り戻すのを待つ。
やがて彼は頃合を見計らって口を開いた。
「あの……俺の手の事は置いといて、どうして二人ともあんな真似を?」
『いきなりでびっくりさせてしまったみたいね。それも本当にごめんなさい……でも勘違いしているのはご主人様の方なのよ』
静かに貝丞の手を放し、ラグーナが答える。だが貝丞は彼女の言葉を理解しかねた。
「それはどういう……?」
『あたし達はね、あたし達が全てを捧げたいと思った時点でもうご主人様、つまり貝丞君だけの所有物なの』
「え……?」
『あたし達の行動も思考も生きる理由も、決めるのは全てご主人様。さっきミュラが言った儀式は、奴隷としてお仕えする事をご主人様にお許しいただくという意味しかないわ。そのお許しが得られなければ、あたし達に生きる自由はないのよ』
『そうだよ。ご主人様に、貝丞に捨てられたらボク達は死ぬしかないんだ』
「なっ……」
あまりの事に貝丞は危うく思考停止しそうになった。二人がそこまでの覚悟とは思ってもみなかったのだ。所有物なら持ち主の意思で無傷のまま手放す事もできるはずだが、それは認められないルールらしい。
どちらにしろ、とてもではないが口先でごまかしたり結論を先延ばしにできるような状況ではなかった。それでも貝丞はまだ、ラグーナとミュラを傷付けずに説得できないかという希望を捨てない。往生際の悪い男である。
「…………」
貝丞は再度脳内国会を召集した。今度は理性党の大部分が造反を起こし、『ラグーナとミュラの為に主従関係を受け入れるべき』と主張し始める。本当にふさわしい主人を彼女達に探してもらおうと主張する派閥は極めて旗色が悪かった。
だがその脳内議論が終わらないうちに、ラグーナが口を開く。

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