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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 32

貝丞は咄嗟に体を乗り出して両手を突き出し、それぞれの短剣の切先を手のひらでさえぎっていた。(手を掴んで短剣を止めても、彼女達が首を前に出せば突き刺すことができるので意味がない)
次の瞬間、短剣は彼の手のひらに突き刺さる。
ザシュザシュッ!
『え……』
『嘘……』
「あ……」
短剣は深々と貫通した。左右の手の甲から銀色の三角形がにょっきり顔を出す。二人は本気で自殺しようとしたのだと貝丞には感じられた。彼の手のひらから流れ出した血液はラグーナ、ミュラの手へと伝わり落ち、それぞれの肌を赤く濡らす。
「あははは……」
殴られたり関節を極められたりするのとはまた違う痛みである。さすがの貝丞も顔を引きつらせるが、そんな事を言っている場合でもなかった。何故二人が自殺を図ったのか全く分からないが、とにかくこの場を収めない事には話にならない。
「くお……」
貝丞は手に短剣を突き刺したまま、ズッ、ズッと少しずつ手前に引き寄せた。茫然としていたラグーナとミュラだったが、これでようやく我に返ったらしい。二人は口々に『ご主人様っ!!』と叫びながら短剣を手放した。
『ああ、何て事なの……』
『ボク達の為に、こんな……』
「いや別に、大した事じゃ……」
貝丞は強がったが、これで大丈夫のはずはない。ベッドの上に座り込みながら、十中八九両手はお釈迦だろうと彼は覚悟する。ラグーナとミュラは泣きそうになりながら貝丞の手を取り、短剣の柄を握って引き抜いた。
ズルッ……ズッ……
「う……」
傷口からの出血が多少増す。貝丞は二人が抜いた短剣でまた喉を突くのではと心配したが、彼女達はあっさり床に捨てた。自分達の自決より貝丞の怪我の方が重大事らしい。ミュラが悲痛な表情で叫ぶ。
『ラグーナ、早く治して!早く!』
『え、ええ。ご主人様、今治療を……』
ラグーナは両手で貝丞の右手を包んだ。そのまま目を閉じ何やら呪文のような物を唱え出す。すると貝丞の右手は淡い光に包まれた。
――これは!?
電球の光とも放射性物質が放つ燐光とも違う、強いて言えば蛍火に似た印象の光だった。その光に包まれ、貝丞の手から次第に痛みが引いて行く。あまりに信じがたい現象に、彼はまだ『治療』されていないはずの左手の痛みまで忘れそうになった。
「ああ……」
――これが魔法を使った治療なのか……?
試合での負傷を魔法で治療したとラグーナに聞いた時、貝丞は半信半疑だった(と言うか信じたくなかった)。だがこうして実際に見せられると、否応無しに信じざるを得ない気持ちになってくる。
やがて治療が終わったのか光が消えた。右手の痛みは感じるか感じないかぐらいに治まっている。付着した血液のせいでよく見えないが、恐らく傷は完全にふさがっているだろう。
じっと様子を見ていたミュラが、またラグーナを急き立てた。
『もう片方も!早く早く!』
『わ、分かってるわ。次はこっち……』

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