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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 31

そもそもあの話には貝丞がミュラに勝ったらという条件が付いていたはずだ。試合の経過がどうであれKO負けを食らった以上、ここは辞退するのが筋ではないだろうか。
議題はしばらく貝丞の脳内国会で検討され、本能党と理性党が議論を戦わせる。その後に続く脳内投票によって貝丞の腹は決まった。
――ちょっと惜しいけど、ここは遠慮しておこう。その方がお互いのためだ!
断れば今は気まずくなるかも知れない。
だがいずれ実際にミュラに勝てる、本当に主人にふさわしい男性が現れるだろうと貝丞は思う。世界は広いのだから。何なら自分がその男性を探す手伝いをしてもいい。日当と飯付きで。
『ご主人様…?』
『どうしたの…?』
ラグーナとミュラが貝丞の顔を覗き込んで来た。あまり気を持たせるのはよくない。意を決して貝丞は口を開いた。
「あの…二人とも何か勘違いしてないかな?」
『どういうこと?』
「俺はそんなご立派な人間じゃない。あなた達の主人なんか務まるわけないよ。他にもっとマシな人を探すんだね」
それを聞いたミュラとラグーナは見る間に悲痛な表情になった。ミュラに至ってはボロボロと涙を流し始める。どうやら貝丞が予想していた以上にショックを受けたようだ。彼は少しばかり反省した。
――言い方がまずかったかな……?
とりあえずフォローしようと貝丞は口を開きかけた。だがそれより先にラグーナとミュラが何事かを話し合い始める。
『もうお終いだ、ボク達……』
『仕方ないわ、ミュラ。ご主人様がお決めになったことだから……あたし達は従うだけよ』
『そうだね、ラグーナ……』
「え……?あの……」
妙な会話である。貝丞には状況が分からなかった。分かるのは話がまた変な方向に飛んでいるという事だけだ。どうしたものか戸惑っていると、ラグーナが彼に向かって話しかけて来た。
『これでお別れね、ご主人様……』
「え?あ、ああ。そうですね……」
貝丞は納得した。ラグーナは『主人にならないならここから出て行け』と言っているのだろう。
彼は自分の服と靴が置いていないかと周りを見回した。試合でもらった賞金は治療代として置いて行っていいが、自分の物は持って出て行きたい。
「ええと……」
ベッドの上には見当たらなかった。顔を上げ、俺の服はと聞こうとした貝丞は驚愕のあまり我が目を疑う。ラグーナとミュラがどこからか短剣を取り出し、自らの喉を突き刺そうとしているのだ。
『『さようなら、ご主人様……』』
「ヒッ……」

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