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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 25

しかし、彼女は既に意識を手放した後だった……
「何だかスッキリしないな……」
貝丞は釈然としなかった。人間が窒息する時に特有の痙攣がミュラから感じられなかったからである。(先程の貝丞はそれを再現するのをうっかり忘れていた)
「…………」
未だ脳震盪から回復しない貝丞がぼうっとしているといきなりミュラの手足が動き出した。
「うお!」
どうやらミュラは半分だけ気絶していたようだ。そこへ来て貝丞の絞める力が緩んだものだから息を吹き返したらしい。彼女は力任せに貝丞の足を振りほどいて立ち上がり、素早く離れて呼吸を整えた。
『ごほっ、ごほっ…はあ、はあ…』
「くっ…」
やっと脳震盪から回復した貝丞は床に寝転がったまま様子をうかがった。貝丞程の耐久力も回復力もないであろうレフェリーはうつぶせに倒れたまま、全く動き出す気配がない。
――大丈夫かな、この人?
心配ではあるが、試合中においそれと介抱するわけにもいかない。貝丞がしばらくミュラとレフェリーを交互に見ていると観客席から数人の男性が舞台に上がってきた。
「ん…?」
彼らは舞台の下から担架を受け取り、寄ってたかってレフェリーをその上に乗せた。
そのまま男達は舞台を下り、レフェリーをどこかへと搬送していく。それを見て貝丞はようやく安心した。
「さて…」
改めて舞台の上を見ると一人の男が残っていた。おそらく彼が新しいレフェリーを務めるのだろう。貝丞は今運ばれていった方をレフェリーその1、新しい方をレフェリーその2と便宜的に呼ぶことにした。レフェリーその2が貝丞に近寄り、立ち上がるよう手振りで促す。
――立った状態から再開か!
ちょっとばかり理不尽じゃないかなと貝丞は思った。観客の一部からもブーイングが飛んでいる。
だが選手としてレフェリーの指示には従わざるを得なかった。レフェリーその1を近くに呼んで事故の原因を作ったのは自分だという負い目もある。
――しょうがないな、こうなったら!
貝丞は覚悟を決めて立ち上がる。もう一度舞台の中央まで進んでミュラと向かい合った。
――まだだ。まだ終わらんよ!
すでに右手が使えないことがばれているという洒落にならない状況にも関わらず、貝丞は往生際が悪かった。
レフェリーその2が試合再開の合図(と思しきもの)をする。貝丞は左手のみを構えてミュラに接近した。
「行くぞ!」

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