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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 22

もっとも笑顔は引きつっているし、脂汗もにじんでいるので本人が思うほどには誤魔化し切れていないのだが。
『あの…』
貝丞が舞台の上に戻ろうとした時、後から立ち上がったミュラが話しかけてきた。途端に貝丞の体がビクンと跳ね上がる。
「な、何か…?」
ギリギリと音が聞こえてきそうなぎこちなさで、貝丞はミュラの方に振り返った。
『変な音がしたような気がするんだけど…もしかして君、どっちか腕を怪我してない?』
「フッ。そのような事、当方の記憶にございませんな…」
『じゃあ両手挙げてみて』
「さあ!試合再開と行こうか!」
貝丞はミュラに背を向け、飛び上がって舞台の上に戻った。
――さて、どうするか…
舞台の中央まで歩きながら、負傷した腕をどうしようかと貝丞は考えた。一か八か脱臼した部分を自分ではめてみる手もないではないが、成功しても脱臼が捻挫に変わるだけなのですぐには動かない可能性が高い。それにはめる所を見られたらどちらの腕を怪我しているかがばれてしまうだろう。
――向こうはこっちの怪我には気付いても、どっちの腕を痛めたかはまだ知らないはずだ。だったらまだ駆け引きの余地がある!
このまま戦うことにした貝丞は後ろを振り返った。貝丞に続いて舞台に上がったミュラが近寄ってくる。彼女は貝丞と3メートル程の距離を隔てた所で止まり、観客席の一点に目をやった。
「ん?」
釣られた貝丞が同じ方向を見てみると、ミュラとそう変わらない長身で黒髪の女性が手で何か合図のようなものを送っていた。それを受けたミュラがうんうんと何やら神妙な顔で頷いている。
――もしかして、あの人がさっき言っていたラグーナさんだろうか?
そう思う貝丞だったが、すぐに今はそれ所ではないとミュラの方に向き直った。
ミュラも貝丞の方を見て二人の視線が合う。直ちにレフェリーが仕草で試合の再開を宣言した。両手を構えながらミュラが口を開く。
『言っておくけど、手加減はしないよ』
それは当然だと貝丞は感じた。自爆して負傷した相手に手心を加える必要はどこにもない。苦笑しながら返答する。
「ああ、是非そう願うよ…」
貝丞は両腕をだらりと下げたまま相手との距離を詰める。もちろん左腕は普通に動かせるが、それで右腕を使わなければこっちを負傷しましたと公言するのと同じである。ここぞという勝負所までは左腕も封印しないといけない。
――まあ、それまで保てばの話だけどね…
ミュラの左の回し蹴りが頭に飛んでくる。それを体をのけぞらせてかわしながら、果たして本当に勝機があるだろうかと貝丞は考えた。
『はあっ!』
ミュラが右の回し蹴りを、今度は脇腹に放ってくる。貝丞は左膝を大きく上げてそれを受けるが、蹴りの衝撃で大きく体が泳いだ。受けられたミュラも若干痛そうな顔をする。
――本格的にまずいなこりゃ!
貝丞は後ろに飛んで体勢を立て直す。すぐさま追い掛けて距離を詰めるミュラだったが、その出足は前よりいくらか鈍いように貝丞には感じられた。

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