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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 21

この時になってようやくミュラが動揺したような声を上げた。おそらくアキレス腱固めなら何か防ぐ方法を考えていたのだろう。貝丞はそこを見越して違う技を選択していた。
「さっきと同じじゃ芸がないと思ってね!」
貝丞は腕に力を込め、自分から見て反時計回りにミュラの脛をねじり上げた。これで膝関節に負担がかかって激痛が走る。ヒールホールドという技だ。
『ぐあっ!』
ミュラの顔が苦痛に歪んだ。それを見た貝丞は
――勝ったかも知れない!
と思い始める。
「膝を壊したくないなら、もう止めた方がいいと思うよ?」
関節を破壊しないよう細心の注意を払いながら、貝丞は相手に降参を勧めた。
『うぐう…ああ…』
だがミュラはなかなかギブアップしない。固められていない右足と両手をしきりに動かして体を移動させようとしている。
「無駄だ。そんなことしても外れないよ」
貝丞は少しだけ腕に力を余分に込めた。もっともあまり捻りすぎると相手の膝は一発で壊れてしまう。加減が難しいところだった。
『うああ…くうう…』
だが貝丞の思惑を知ってか知らずか、ミュラは苦悶の表情を浮かべながらずりずりと舞台の上を移動し続けた。観客は一様に怪訝な顔をしている。どうしてミュラが苦しんでいるのか理解できないのだろう。
そのうちにとうとう二人は舞台の縁まで来てしまった。ミュラの頭が外にはみ出る。
――どこまで行く気だ?
貝丞は怪しんだが、ミュラの動きは止まらなかった。ついに彼女の上半身が舞台の外に出て、もう少しで落ちそうになる。近くにいた観客がどっと退いた。
「ちょっと!後ろ後ろ!」
貝丞は慌てて注意するが、それでもミュラは体を動かし続けた。
――もしかして自分から下に落ちる気か?仕方ない。勝ちは遠のくけど…
これ以上は危険と感じた貝丞は技を解いて立ち上がる。だがその時はもう遅かった。お尻まで外に出したミュラが舞台の下へと落下していく。
「危ない!」
貝丞は咄嗟に手を伸ばし、ミュラの手を掴んで舞台の上に引き戻そうとした。だが体格に勝るミュラを引き上げるどころか逆に舞台の下へと引きずられてしまう。
『ああっ!』
「うわっ!」
ドサッ!
まずミュラが地面に仰向けに墜落した。その上からさらに貝丞がうつぶせに落ちていき、ミュラを下敷きにしそうになる。
「くっ!」
ドスッ!
無意識のうちに貝丞は、ミュラの傍らに右手を付いていた。おかげで彼女を押し潰さずに済む。だが同時に右肩に異音がし、激痛を感じた。
「っ!!」
――しまった。脱臼したか!
貝丞は痛みを顔に出さなかった。相手に負傷を悟られるわけにはいかない。下になったミュラ(受身を取ったのか特にダメージはなさそうだった)に向かって薄笑いを浮かべると悠然と立ち上がった。

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