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メロン・ワールド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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メロン・ワールド 11

だがそれより早く先程のセコンドの男が舞台に上がってオグロロに走り寄っていく。
――起こし方知ってるのかな?
貝丞はとりあえず見守ることにした。ところがセコンドの男はいきなりオグロロの頭を蹴り飛ばしたのである。何度も蹴りながら大声で叫んでいる。「この役立たず!」とでも罵っているのだろう。
痛みで無理やり起こされたオグロロは腕で必死に頭をかばいながら何か言っている。きっと許しを請うているのだろう。
――・・・・・・。
少しの間あっけに取られて見ていた貝丞は、無表情でセコンドの男に近づいた。
それに気付いたセコンドがオグロロを蹴るのを止め、下卑た笑いを浮かべながら貝丞に何ごとか話しかけて来る。貝丞はそれに微笑み返すと日本語でこう語りかけた。
「お前も食らってみろ」
左足を大きく踏み込むと先程オグロロに向けて放ったのと同じ右の回し蹴りをセコンドの左足に叩き込んだ。まともに食らったセコンドの体が空中で半回転し、次いで床に落下する。
倒れたセコンドの足の方に回りこむとその左足首を自分の右脇に抱えた。そのまま貝丞も床に座り込み、両足でセコンドの左膝を挟みつけた。
さらに立ち上がれないよう右の脛でセコンドの腹を押さえ付ける。
こうしておいて胸を張ると抱えられた足首に激痛が走るのだ。いわゆるアキレス腱固めである。
貝丞はセコンドの足の靭帯が切れない程度に締め上げ、思い切り苦痛を与えた。もう最初に試合に出た動機?何それ?な状態である。
「くぁwせdrftgyふじこ!」
激痛のあまり悲鳴も満足に上げられないセコンドが白目を剥いて失神するのにそう時間はかからなかった。
技を解いて立ち上がり、セコンドを舞台の下まで蹴り転がしてようやく貝丞の気分は収まった。
「お疲れ様。君のセコンドの身に起きた不幸な事故に同情するよ」
貝丞は通じないのを承知で話しかけ、オグロロを助け起こした。彼はこれからもあのセコンドの元で戦わなければいけないのだろう。
そう思うと貝丞は憂鬱だがオグロロの方がもっと憂鬱だと思い顔には出さずにおいた。
立ち上がったオグロロは貝丞の方を向いて寂しそうに笑うと舞台を降り、セコンドの男を肩に担いで観客の中に消えて行った。
――本当に出てよかったのかな?
首を捻りながら舞台の中央に戻った。
観客は静まり返り、レフェリーが引きつった顔で貝丞を見ている。自分では分からないが試合中よりよほど恐い顔をしていたのだろう。
やがてレフェリーがおずおずと賞金の札束を差し出してきた。
当初の目的を見失った以上、この金を受け取るべきかどうか貝丞は迷う。だがこの地で野垂れ死ぬ可能性もある今の自分にとって、これがあるのとないのとでは天国と地獄の差だ。贅沢を言う余裕はなかった。
――日本に帰ったら同じ金額、いや利子付けてこの国の赤十字に寄付してやる!!
内心でそう言い訳し、貝丞は札束を受け取った。

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