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気弱な少年とセクシーな仲間達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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気弱な少年とセクシーな仲間達 256

「全市民に避難勧告を出したからな。これでも少ないくらいだよ。」
アーカートの話によると、半分近くの住民は滅亡寸前のルカジマを見限り、どこか違う居住地を求めて旅立ったらしい。
そう説明するアーカートの表情はどこか暗い。傷が痛むのか、亡き母の名声や力に遠く及ばない自分の不甲斐なさを嘆いているのか、大和には分からなかった。
しばらく黙っていると、同じく下を見下ろしていたティナが叫んだ。
「大和君、あそこに着陸してくれないか。あそこでマルティールが指揮を取っている。」
と、巨大魔法陣の中心を指差した。
大和に異論はない。すぐさまグリフォンに指示を出してティナが指示した場所に向かった。


大和達が着陸すると、マルティールが険しい表情で近づいてきた。
「アーカート様…それにティナ様も。一体その傷はどうなされたのです!」
すぐさまマルティールは近くにいた兵士に医者を呼んでくるように命令した。
「いや、私は構わない。それよりティナと、ここにいる…」
グリフォンの上で槍を握りしめたまま気絶している女を見ながら、
「この女性の治療を優先してくれないか。私の傷は大したこと無いからな。」
アーカートが笑いながら言った。
しかし、どんなに医療の経験が無い人間が見ても、アーカートの傷は決して(大したこと無い)とは言えない。
至る所に痣が出来ておりドクドクと血が流れている。左腕に至っては肘が変な方向に曲がっているではないか。
しかし、それを見てもマルティールは先にアーカートを治療させるつもりは無かった。
もしもここで、ティナや気絶中の美女よりも先にアーカートを治療しようとするならば、彼は治療を頑なに拒むのは目に見えていたからだ。
いや、拒むくらいならまだいい。下手をすれば、自分が怪我人では無いことを証明するために、重傷の体で敵に突っ込んで行きかねない。
自分よりも他人を第一に考える男。それがアーカートだった。
そうこうしている間に、先程の兵士が医者を連れてやってきた。
「分かりました。」マルティールが言った。
「では、ティナ様と槍の女性を優先させていただきます。アーカート様は、その後で」
「うむ。頼んだぞ。」
アーカートが顔をしかめながら言った。必死に痛みをこらえているのが分かる。
「あの…。アーカートさん」
大和の手を借りてグリフォンから飛び降りたシホが言った。
「もし良かったら私が治療しますけど……」

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