魔導志 89
「あぁん?ふざけんら…あ?なんか変らろ…」
男は呂律が回らなくなっている。クリスはクスッと笑うと一言、
「秘技・闘魔断迅剣。」
言い終わると同時に男の周囲の壁に細長い亀裂が無数入る。
「ひゃら!?」
「ふふ、地獄に落ちろ」
「な、ふざ…ぁ…」
ドサリッ
男は急に糸の切れた人形の如く白目をむいて床に倒れこんだ。
「さすがに化け物でも内臓と脳を同時に切り刻まれれば生きれまい。残念だったな。」
「くくくくく…」
トムスが俯いて肩を揺らしている
「む、トムス?」
「クリスぅ〜っ!!君は凄いよ!!さすがはぼくの婚約…ぎゃぁ!!」
クリスに飛び付こうとしたトムスの足に短刀が突き刺さった。
「ひゃひゃ…おれら…しなねぇんらよ…」
「痛い〜っ!ぼくの足に何か刺さってる〜っ!」
「トムス、うるさいぞ。」「ひ…くるら…あああ!」ザシュッ…
クリスは倒れこんでいる男の首を切り落とし、セフィに言った。
「火炎魔法だ。炭にしてしまえ。」
「は、はぃ!」
「さ、皆はこの場で待機、王を逃がすな。」
「了解しました!」
…
「オル・ヘリオン!」
ランドの放った複数の豪火球を避けもせず受けるシーガ。
「へっ効かねぇなぁ!?」「甘いんだよ!」
炎の中へセガルドが飛び込み、シーガの体を斬り裂く。
ザシュッ!
「ぐぁ!虫が馴れ合ってんじゃねぇ!」
「セガル、離れて!」
「ん?おっけぃ!」
ズシャッ!
そのまま返しの刃でシーガの胸を斬り上げながらセガルドは後方に飛ぶ。
「うおお!貴様!待ちやが…っ!」
「オルガ・ヘルドラル!」「グォォォ!」
シーガが見たのは、燃え盛るドラゴンの吐き出した火炎だった。
「うわぁぁぁぁ!」
「やった!?」
「き…さまら…」
全身の表面が炭になりながらも、近づいてくるシーガ。
「うわっ!」
「終わりだ。」
紅月を、持っている鞘に納めたセガルドがシーガの眼前に入り込む。
「貴様…だけは…」
ヒュンッザンッザシュッ!風を切る音と共に、セガルドがシーガを目にも止まらず切り刻んでいく。以前に見せた居合いの技術の応用のようだ。
「…秘技・闘魔連殺刃。」「が…は…ち…くしょ…」「終わりだと言った。」
「…凄い…君は強いよ…」ランドは以前よりも数段強くなったセガルドに瞳を奪われていた。
セガルドも先程のランドを見て同じ心境だった訳だが。キンッと紅月を鞘に納めると同時に、シーガだったモノはバラバラに崩れ落ちた。
「ユリィさん!?」
ゼシカに抱き上げられたユリィは衰弱しながらも無事なようだ。次にセガルドはランドを見る。
「久しぶりだなぁ。」
「うん!元気そうでよかったよ。」
「結局は同じ目的で会うなんて思ってなかったぜ!身長も伸びたなぁ」
「ボクもだよ。セガルは前よりマッチョになったね☆」
二人は純粋に再開を喜んでいる。
「リリーとお前の式神達はどうした?」