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魔導志
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔導志 36

「知らなかった!?ふざけるな!!」
オランの、目標を定められずに振り回した腕が、リグールの顔にぶつかる。
「ぐっ…」
「リグール!大丈夫!?」傍に寄るアリシスを手で制し、リグールは呟いた
「すまない…」
「君が謝っても家族は生き返らない!君は奴らの仲間だ!」
「すまない…すまない…。俺は…」
リグールは涙を流しながらただひたすら謝っていた。「…もう…もう…二度と、この村には来ないで…。この話も俺の事も家族も…全部を忘れてよ…」
「オラン…」
「でも…ネリーだけは忘れないであげて…お願いだよ…」
「彼女…君の事が好きだったから…お金が貯まったらルクードに会いに行くって…でも…でも…」
オランは小さなペンダントを取り出す。
「あぁ…忘れない…必ず…。」
リグールは、見た事のあるネリーのペンダントを受け取り、強く握り締めた。
「リグール!前だ!」
クリスが声を上げる
「オラン!伏せろ!」
「リグール…何…?」
気付かない内に、オランの後ろにはバルデス率いる第3騎士団が…無数の弓が放たれ、すべての矢が精確にオランの背中に突き刺さる。
オランは、まるで糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
「オ…ラン…?オラン!オラン!」
リグールはオランの上体を起こし、何度も体を揺さ振る。
「わかってた…わかってたんだよ…君は奴みたいな騎士には…ならない…。ごめんね…八つ当りだったんだ…」
「将軍!!何故!!」
クリスは怒号の如くバルデスに問い掛ける。
「この任務。結果は孤児院は存在せず、何もなしでよかったんだ。しかし、生き残りがいたとはな。」
「オラン…すまない…俺が無理に聞いたから…」
「いいんだ…俺は君を殴った…おあいこだよ…」
力なき笑顔を見せるオランに、リグールは涙が止まらなかった。
「俺は…お前を絶対に忘れない…大事な兄弟だからな…」
「…ありがとう…。リグール…俺も…みんなのところに…」
「オラン…オラン…」
「…リグール…彼は…もう…」
「いいか。お前らは何も知らない。見ていない。孤児院は存在しない。そこで死んだのは虚言癖の若造だ。わかったな?」
「はぁ…はぁ…バルデス…お前が…」
「リグール・アーカイヴ、上官を呼び捨てか?」
「…ダメよ…リグール…あなたには家族が…弟がいる…」
「そうだ…弟が一人前になるまで、お前が必要なんだろう?耐えろ…耐えるんだ…」
「…この力…何…?リグール…?」
リグールは立ち上がり、真っすぐにバルデスを見る。その瞳は茶色から碧に変化していた。
「バルデス将軍…今回の…調査結果は…何もありませんでした…申し訳ございません…」
「うむ。ご苦労だった。」バルデスは騎士団を率いて去っていった
「…リグール…」
「俺は…狂う…。」
「なんだと…?」
「俺は…あえて狂う事を厭わない。これから、俺が人々に狂気と呼ばれても…」
「…『狂』ね…。文献で読んだ…。私も…狂える…」「お前達…。…私は、私は…」

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